2016 Fiscal Year Annual Research Report
Patent claims and the value of the patents
Project/Area Number |
16K13380
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
岡田 吉美 一橋大学, 大学院商学研究科, 教授 (20732647)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 特許権 / 権利範囲の広さ / 特許請求の範囲 / 請求項1の文字数の逆数 / 前方引用 / 出願人引用 / 複雑技術 / 個別技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
特許権の権利範囲は「特許請求の範囲」という書類によって公示され、特許請求の範囲には、発明概念の一般性という発明概念の広さに関する情報を含んでいると考えられる。しかし、これまで、特許請求の範囲の記載から発明概念の広さに関する情報を的確に捉える手法は確立していない。 本研究は、特許請求の範囲のうち、通常最も広い概念範囲の発明が特定されている請求項1に注目し、発明を物の発明と方法の発明に大別した上で、「請求項1の記載の長さの逆数(請求項1の文字数の逆数)」を特許権の権利範囲の広さの代理指標として用い、当該特許発明の社会的価値(その後の発明に対してどの程度の知識上の影響を与えたか)を予測する上で当該指標がどの程度意義を有するのかを検証した。特に、発明を電気・電子技術に代表される複雑技術の分野と医薬に代表される個別技術の技術分野に大別し、分析を行った。その結果、次の2つの発見をした。 これまで特許発明の概念範囲の代理指標としては、請求項数及び特許分類の数が提案されていたところ、複雑技術及び個別技術のいずれの技術分野においても、前記の2つの指標を制御してもなお、請求項1の記載の長さの逆数は発明者前方引用で測定した特許発明の社会的価値に対して有意な説明力を有することが発見された。 また、請求項1の記載の長さの逆数は、請求項数や特許分類数と異なり、複雑技術の分野ではトップランクの発明に対しては、上位になればなるほどより説明力が増加するのに対して、個別技術の分野では変わらないことが分かった。この現象は、発明の価値は、その価値を向上させる補完発明の出現に依存し、この数が当該発明の概念範囲の広さに依存して大きくなるという経済モデルと整合しており、請求項1の記載の長さの逆数は、請求項数及び特許分類数では捉えることのできない特許権の権利範囲の特徴をよく捉えていると考えられる。
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