2016 Fiscal Year Research-status Report
クラウドファンディングによるネグレクテッド疾病薬開発ベンチャーの存続可能性
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16K13381
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
藤原 孝男 豊橋技術科学大学, 工学部, 教授 (70173490)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 途上国疾病 / バイオベンチャー / デスバレー / ベンチャー生態系 / リアルオプション / ベイジアンMCMC分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の背景として、医薬の主流が化学合成からバイオ医薬に推移する中で、先駆的な創薬バイオベンチャーのほとんどは深化するデスバレー(赤字期間)克服に向け高付加価値の疾病治療を標的とし、人口が高成長の途上国での熱帯・貧困に由来する非常に多くの患者ニーズから乖離する傾向がある。故に、本研究目的は、当該医薬開発の需要と供給の架橋に向け、①米国で法制化された税控除(希少疾病医薬法)や、バウチャー(「優先審査保証」及び「小児疾病優先審査保証」)による研究開発投資の回収可能性、②優先審査保証権の金融工学的評価の有効性、そして、③クラウドファンディング(Crowdfunding)を通したバーチャルベンチャーの存続可能性などを調査し、国際的なバイオ医薬開発に向けたオープンイノベーションへの提言を目指すことにある。 初年度であるH28年度の計画は、当該疾病領域へのバイオベンチャーの参入阻止の障壁として、主に資金・情報・経営能力・承認規制・知的所有権などを想定し、実態調査を通じて障壁の特性を見つけることにあった。特にデスバレーを克服できる開発資金のクラウドファンディングによる調達可能性を重点的に調査し、モデル構築・検証、現実の解釈、モデルと現実のギャップ解消を試みた。アプローチとしては、先ず、論文・特許・財務などのデータを用いたサイエンスリンケージ分析、第2に希少疾病医薬法による税控除、優先審査保証PRVや小児疾病優先審査保証PPRVなどのオプション価値をリアルオプション分析による評価、第3にベンチャーと大学・政府・非営利団体と製薬大企業との提携のゲーム理論による分析、ナッシュ均衡解・パレート最適解を計算し、オプションゲーム分析の有効性の検証、第4に、ネットワークにおける不完全情報下での意思決定へのベイジアン情報探索の効果の検証にあった。 モデル構築やデータによる検証などは概ね実行できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
具体的には、米国での途上国疾病 (Neglected Diseases)を事業分野とするバイオベンチャーの公開財務データを基に、現在とリーマンショック直後との研究開発投資の動向と純損益・株主価値などの指標との関係をベイジアンMCMC分析によって統計的に解析してデスバレー克服の戦略的特徴を検証した。また、現実的動向を理解する目的で、UCBerkleyの工学部長、同大学の起業家・技術センター、UCSFのQB3、スタンフォード大学のOTLなどの聞き取り調査を実施し、米国の法制度の仕組みの検証、当該バイオベンチャーの生態系の調査はできたと考えている。 しかし、フィルードワークで当該事業のバイオベンチャーへの調査が対象企業の了解を得るのが困難でもう少し深く実態に触れることに困難さを感じてもいる。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度の平成29年度では、主にワクチンを対象に第1年度と類似のアプローチを用いてデスバレーの克服可能性をモデル構築・検証と実態調査とを通じて検討する。実態調査の対象としては、ワクチンプロジェクトの多いベンチャーとして、イタリア企業、オランダ企業、デンマーク企業などが主に含まれる。また、先進技術領域の癌ワクチンProvengeを開発したDendreonにも同疾病領域への参入可能性を問いたい。クラウドファンディングの調査に加えて政府支援がワクチンと診断薬の両プロジェクトを増やすという統計的結果の理由も検証する。また、H28年度で果たせなかった治療薬ベンチャーの実態調査もできれば追求したい。研究の中間結果を学会報告する(例:研究・イノベーション学会等)。
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Causes of Carryover |
当初計画に記載したPCについて性能と残高との金額が合わず、次年度で再度、検討することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
充分な性能のPCを次年度予算で慎重に見極め購入する予定である。
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Research Products
(8 results)