2017 Fiscal Year Research-status Report
アジア和僑ビジネスと日本の地方農水産業:国際ロジスティックス・ネットワークの併呑
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16K13395
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Research Institution | Okayama Shoka University |
Principal Investigator |
古川 澄明 岡山商科大学, 経営学部, 教授 (10148992)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 和僑 / 華僑 / 和僑会 / 海外起業 / ベンチャー企業 / ベンチャー投資家 / 和食市場 / 地方農漁業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は「和僑」概念が先行研究においてどのように定義されているか、また定義されるべきかを中心に、「和僑」「華僑」「印僑」等に関する情報収集を行うと共に、概念定義に関する研究に取り組んだ。 良く知られる「華僑」の「華」とは中国、「僑」とは他国での仮住まいの意とされ、「中国本土から海外に移住した中国人およびその子孫」を指す(岩波書店『広辞苑』)。「華僑」の歴史は7から8世紀にまで遡る。東南アジアを中心に、全世界に地縁・血縁・族縁など繋がりで広がる。 香港和僑会では「和僑」を「祖国日本を離れ,中長期的に異国の地に住み,そこで生計を立てている日本人のことを呼ぶ」と定義する。華僑が歴史的に「血縁」「地縁」「利害」を紐帯・結束因してきたのに対し、和僑は海外の日系企業駐在員,現地被用日本人,現地独立事業者などを問わず、連帯意識をベースとする「共助」の精神を「基本精神」として共有している人々と自らを定義する。 「和僑」とは、香港や中国本土を拠点に経済活動で活躍する日本人起業家が2005年に「起業家ネットワーク」を組織し、自らを「和僑」と名乗り、親睦団体を「和僑会」と命名したことに来歴する。「和僑」概念の定義には、まだ多くの実態検証を要する。学術的に「和僑」概念を措定しようとすれば、次の疑問が勃然と起こる。「和僑」と、日本人移民や、鎖国時代以前に広くアジアに広がった「倭人」とは、どのように区別するのか。どこに本質的な特徴の違いがあるのか。「印僑」と呼ばれる人々がいる。インド系移民や在外居住インド人を指す。さらに類似形態に、韓国人、フィリピン人、ユダヤ人などの在外居住がある。どこに概念内包の共通性と差異性を見出すかにより、概念定義が異なることになる。この難問に、平成29年度は取り組んだ。シンガポール、タイ、香港、沖縄等への現地実態調査については、平成30年度に実施することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成29年度を通じて、「和僑」、「華僑」、「印僑」等の概念内容を検討し、「和僑」概念をどのように措定すべきであるかについて、理論面での精覈に取り組んだ。この概念について精察を加えたが、引き続き、類似概念を含めて、共通性と差異性を検討し、「和僑」概念を定義する必要がある。過去の先行研究に定義を探索し、また業界定義をどのように位置づけるべきかを定義されるべきかなど、概念定義に関する研究は多くの課題を残している。 アセアン諸国や、物流中継拠点に関わっている日本の沖縄等や、シンガポール、タイ、香港、沖縄等で活動している「和僑」ビジネスについて、現地への実態調査を実施する研究計画は、平成30年度に繰り延べることとし、平成29年度においては上記の現地への実態調査を実施しなかった。否、正確には、概念定義を明確にした上で現地調査計画を策定して実態調査に入らないと、所期の研究目的を達成する成果に至らないと判断されたため、研究計画を変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) 「和僑」概念内容の定義を行うために、引き続き、先行研究を行い、理論面での精覈に取り組む。 (2) 実態調査を行う。アセアン諸国、東アジア諸国及び西日本や沖縄地域の「和僑」ビジネス範疇に属すると思われる事業者のヒアリングを行う。とくに西日本地域所在の業者、物流業者、現地に拠点を置く和僑ビジネス従事者との間で営まれるビジネスの接点と現地事業展開に関するビジネスネットワークを追跡調査する予定である。 (3) 目標は、日本の地方農水産業が和僑ビジネスを介してアジア広域ビジネスネットワークに取り込まれて、和僑と地場業者との共軛関係及び、日本のビジネス環境から飛び出そうと模索する地場業者の自律的な進化と国内「和僑」化(国内各地に和僑会が組織され、アジア和僑とビジネスネットワークに深く参加する)の意味を問う。
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Causes of Carryover |
平成30年度研究計画において、下記現地への実態調査を実施する。調査対象の地域と対象は、アセアン諸国や、物流中継拠点に関わっている日本の沖縄等や、シンガポール、タイ、香港、沖縄等で活動している「和僑」ビジネス活動とビジネスネットワークである。
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