2017 Fiscal Year Research-status Report
医療経営における需用者視点の自費医療の評価と体系化にむけた出産前後自費医療の分析
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16K13398
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
菅 万希子 帝塚山大学, 経営学部, 教授 (10612989)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 陽子 滋賀医科大学, 医学部, 非常勤講師 (80432318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 出産医療費 / 出産ニーズ / 産婦ニーズ / 褥婦ニーズ / 助産師ニーズ / 出産医療費評価 / 出産医療費国際比較 / オランダ出産医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、出産を契機とした妊婦と褥婦における健康上及び仕事や家事を行う上での変化に焦点をあてて調査を行った。具体的には、2016年度の助産師に対する調査結果から、助産師の助産の仕事に対するニーズを抽出し、そのニーズと対応する内容で妊婦と褥婦に質問紙調査を行った。その結果、助産師のニーズと妊婦・褥婦のニーズが対応していないことが明らかになった。そこで、再度妊婦・産婦・褥婦の顕在ニーズおよび潜在ニーズをマーケティングの視点から発掘するため、出産前後の変化について自由回答形式で行った調査で、381人の回答を得て、その分析を行った。またその381人の中から、出産につき健康や生活の中で課題をもっていると考えられる7人を抽出し、インターネット上でのデプスインタビューを行った。 これまでの研究では、日本での出産は公的補助があるためか、自己負担で出産前後のケアを行う場合は、それらのケアに対する妊婦や褥婦のニーズや評価は低いと考えられた。しかしながら、産後鬱の問題が注目されており、調査からも産後の不安や家事・育児に対する負荷へのストレスもかなりみられたことから、制度的な支援が必要であると考えられる。助産師の助産関連の仕事へのニーズはそこにあるが、日本では助産師のこれらのニーズが充足されているとは言えない。 そこで、すべて正常出産を助産師が行っているオランダの出産医療と日本の出産医療を比較するため、オランダの地方医療行政者への聞き取り調査を行った。オランダでは医療費効率化のため、助産師が家庭で出産を補助する制度が一般的である。この調査からは、オランダの出産にかかわる制度および出産に関わる費用も明らかにすることができた。 オランダと日本の出産費用比較調査は、日本ではまだ行われておらず、今年度の妊婦・褥婦のニーズと関連づけて、出産関連の費用評価に大きく参照できる結果を得ることができたと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2016年度の助産師に対する調査から、妊婦・褥婦に対する調査を対照的に行うことにより、助産師と妊婦・褥婦のニーズが大きく乖離していることを明らかにすることができた。そこで改めて、妊婦・褥婦の潜在ニーズの発掘のための調査を行い、自己負担自費診療の費用評価への方向性を見いだすことができた。 一方、日本における出産関連医療費に対する女性の受け取り方が、補助のでる費用として固定化していると考えられるため、オランダの地方医療行政者に対する聞き取り調査を行い、出産関連費用について国際的な視点からの評価を行うことができたことは、次年度へむけた大きな成果となった。出産費用を負担することによる少子化の抑制効果は確かにあると考えられるが、研究に期待されることは、従来と異なるアプローチも検討することにより、高品質な出産環境を維持しつつ医療費の効率化を同時に進める新たな方向性の可能性を見いだすことである。
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Strategy for Future Research Activity |
出産前後の女性の変化にさらに焦点をあてて、研究をすすめることにより、ニーズを明らかにすることができると考えている。妊婦・産婦・褥婦を含めた出産に関わる女性をセグメントする新たなモデル構築をめざし、文献レビュー、質問紙調査、聞き取り調査、を行う。その結果から、セグメントごとの出産に関わる医療費評価の体系化をすすめていく。
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Causes of Carryover |
次年度実施予定の出産関連医療の評価構築にむけた調査には一定規模が必要である。 そこで、助産師と妊婦・産婦・褥婦のニーズの乖離を分析するため行う海外での成功事例に対する聞き取り調査を、海外の行政勤務者が来日する機会をとらえて行い、交通費及び宿泊費の効率化を実現し、次年度の調査費を捻出した。
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