2016 Fiscal Year Research-status Report
予算管理論の再構築:グローバル経営におけるダイナミックな環境適応を切り口に
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16K13404
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
淺田 孝幸 立命館大学, 経営学部, 教授 (10143132)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大浦 啓輔 立命館大学, 経営学部, 准教授 (20452485)
平井 裕久 高崎経済大学, 経済学部, 教授 (40399019)
堀井 悟志 立命館大学, 経営学部, 教授 (50387867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | グローバル経営 / 予算管理のダイナミック化 / 予算管理システムの課題 / アジアでの日本法人の課題 / 北米での日本法人の課題 / 予算原価/実際原価の精度化 |
Outline of Annual Research Achievements |
年2回の研究報告会(2016年9月2日、2017年3月16日、立命館大学茨木キャンパス、研究集会用オフィス)を実施した。第1回は、研究方法とスケジュールの確認、第2回目は、研究経過についての各自の担当についての報告と討議を行った。先進事例については、研究代表者、分担研究者1名(堀井氏)より報告を行い、全員で内容についての討議をおこなった。研究実績としては、主査は、アセアン(ベトナム、インドネシア)における日本現地法人のマネジメントコントロールの現状と予算管理の機能につき、ベトナムでの日本企業事例について、現地での知見を報告した。また、分担者(堀井氏)から、現在調査中の日本法人製造企業(2社)について、予算管理にからむ課題について報告があった。とりわけ、報告で興味を引いたのは、日本企業のアセンアン進出ならびに、北米進出などで、部品ならびに、組み付け品などのコストの可視化が十分でなく、コストと収益との対応に不安がある事例が報告された。これの計画と実績の予算をベースとした対応をどう、今後検討すべきか、グローバル化している中堅製造業の課題であるとの報告であった。また、代表者は、ベトナムでの日本メーカーの事例を挙げて、現地の子会社の成長は、労務費の競争優位性から大きかったが、現在賃率上昇(年率5%)から、早晩限界になり、ベトナムの高生産性、高付加価値化には、予算管理の結果からも限界があることなど明らかにされた。以上の他に、堀井氏からは、2本の論文が提出されており、原価管理、予算管理が十分に果たすべき機能の点で、課題が多くあること。その理由に予算管理が、十分に生かされない実態があること、その背後の組織的課題などが、報告された。平井氏からは、工程別計算におくるFIFOの計算構造のもつ仕掛品評価への影響についての報告が行われ、評価方法などの再検討の必要性が起こる事例の説明があった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例などによる課題抽出については、報告を通じて、全員が共有している。今後は、事例から得た知見を、具体的なアンケート調査において、リサーチクエッションとして展開し、課題、仮説について、質問表での展開と回答率・回答対象をどう具体化していくかである。なお、分担者の堀井氏、大浦氏、平井氏は、いずれもアンケート調査ならびに統計解析に習熟していることから、このあたりを今後詰めていき、回収率も分析に耐えるものになる上で、方法・手段についても検討していきたい。 今年は、2年目であることから、年度後半には、アンケート調査を行う予定である。なお、調査結果対象については、ヒアリング先も確保することも、課題である。「ダイナミックな環境」での予算管理システムのレリバンスをどのように確保しているのか、その有力な知見を得るための方法として、ヒアリングとアンケートの対象先について、実施の事前と事後で、訪問調査などを入れながら対象について吟味していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
先進的な予算管理のダイナミック化の例を、堀井氏の考察している事例以外にも、2-3件、探しだし、それを研究対象に加えて、事例研究を重ねる予定である。なお、これとは別に、定量研究として、アンケート調査を年度後半に実施する予定である。定量研究のアンケート内容については、すでに、堀井氏による、類似した調査結果ならびに、調査資料があることから、これを参考にする。研究集会は、アンケートを実施する前での全体での方針確認と、実施・回収後での分析についての理論的な検討を中心にしたものを行う。また、個別に堀井氏による、深い事例調査などもあることから、浅田の今後の調査報告、大浦氏の調査報告などとすりあわせながら、日本企業の予算管理のダイナミック化の背後にある、課題と解決方法としての予算管理システムの諸問題を先進的な事例を中心にヒアリングで、明らかにする。 以上から、本年度は、アンケート調査分析とその後のヒアリング・分析を中心とする予定である。もっとも、予算が限られていることから、他の競争的資金も同時に確保することを施策しており、それが獲得できれば、最終年度におけるフィールド調査へとつなげる予定である。課題の1つに、分析方法として、平井氏により、これまでの統計的な手法では明らかにできていない予算管理システムの差異分析などの手法とその情報価値、企業の戦略的SCMでの環境適応などの戦略的行動と、予算情報との関係などの企業の戦略的適応行動の評価・分析方法としての予算管理システムの可能性についての知見を明らかにできる可能性についても、課題の1つとしていく予定である。
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Causes of Carryover |
企業インタビュー調査などの予定をしていたが、それの実施は、次年度に一部延期となったことから、余剰が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年の実態調査で利用する予定である。なお、利用は年度後半を予定している。
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