2018 Fiscal Year Research-status Report
東北地域における漆文化・産業の再評価と地域再生に関する文理融合型の基礎研究
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16K13407
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石沢 真貴 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (20321995)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
成田 憲二 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (40333918)
林 武司 秋田大学, 教育文化学部, 教授 (60431805)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 東北地域 / 漆文化・産業の再評価 / 伝統的地場産業 / 地域再生 / 文理融合 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.植物生態学的調査 湯沢市稲庭大沢地区でかつて行われていた漆生産規模や特徴を把握し、また今後のウルシ生産可能性を推定するために必要な新規個体の加入過程を明らかにすることを目的に、現存個体と新規加入個体に関する以下の調査を行なった。 1)ウルシ大径木のサイズ計測、諸状況(漆掻きの有無、ツル等の影響、健康度)、GPSを用いた個体位置測定。2)新規加入個体のサイズ計測と位置測定と、現在の土地利用についての関係 これらの情報から、(1)大径木のウルシ個体は現在も使用されている道路沿いと過去の土地境界線上に多く分布している事、(2)ほとんどの大径木は以前漆掻きに利用されており現在腐朽が進行している事などが明らかにされた。また新規加入個体は(3)耕作放棄地に多く見られる事、(4)一部の大径木からの分根による無性的繁殖による可能性が高い事が推察された。 2.自然地理学的調査 研究対象地域および周辺地域の地形や地質,土地利用等の各種情報を取得し,GISを用いて整理を進めた。気象についても本研究の実施期間を含め過去のAMeDASデータ収集と整理を行った.平成29年度に採取した水試料(研究対象地域の東西に分布する丘陵を源流域とする沢水や湧水、平地部に位置する湧水)の化学分析を推進した。その結果、対象地域の東西に分布する丘陵では、沢水や湧水の酸素・水素安定同位体比に僅かながら差異が認められた。一方、主要溶存成分については東西丘陵で地質が異なるものの基本的な水質形成プロセスは共通していることが明らかとなった. 3.社会科学的調査 1)漆文化・産業に関する、主に秋田県内及び岩手県の各事業等の動向について情報収集した。特に岩手県では国産漆をテーマにした事業が活発化しており視察、資料収集を行った。2)国立国会図書館、各地図書館、博物館等において、漆文化、産業に関する学術的研究および文献資料の閲覧収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
植物生態学的な調査については、研究実績で示したようにおおむね進んでいるといえるが、自然地理学的研究および社会科学的研究については現地状況等の影響で思うように進んでいない面が見られる。 自然地理学的調査においてであるが、ウルシ苗木の植栽地における土壌水分観測については機器の設置することを試みたが,土壌中に礫が多いためにセンサーと礫との接触を避けることができず,設置できなかった.研究期間が延長されたことから,原位置の状態を大きく擾乱させずにセンサーを適切に埋設する方法を検討するとともに,別のウルシ植林地に機器を設置することも含めて準備を進めている. 社会科学的調査においては、前年度までにある程度現地調査は進めてきたが、今年度は追加の現地調査が思うように進められず、聞き取り調査内容や現地収集資料の整理等がまだ不十分な面がある。研究成果の取りまとめの計画も進められない状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.植物生態学的調査 これまでの調査結果をもとに、今後のウルシ生産の可能性を推定するために必要な新規個体の加入過程を明らかにする等の研究成果を整理し、湯沢市川連地区における漆生産の持続可能性を評価する。 2.自然地理学的調査 土壌水分計を現地に設置して観測を行う.水試料の分析結果等をGISに統合し,研究対象地域の自然環境の特徴を整理する。 3.社会科学的調査 引き続き、秋田県漆器工業協同組合を主体とした「漆の森形成事業」(漆苗木植栽事業)などの地域再生事業や、個人事業主の事業展開、若手職人のネットワーク形成による活動等について動きがあれば補足追加調査し、地域再生の動向を把握する。 4.全体として、平成30年度中にできなかったデータ収集等の補足・追加調査、各種データを基にGISデータベースを構築し、基盤情報として行政や地域住民に広く提供できるようにフィードバックする作業を行う。文理融合の研究成果と課題点を確認し今後の研究展開の方向性を検討しながら研究報告等作成を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者の体調不良等により、研究期間を延長することになったため,予算の一部を繰り越すこととした。この予算については,現地への旅費や資料収集、研究指導等に関する旅費として使用する予定である。
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