2016 Fiscal Year Research-status Report
男性の生殖論に向けて―出生前検査における男性の経験に関する調査
Project/Area Number |
16K13410
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
菅野 摂子 電気通信大学, 男女共同参画・ダイバーシティ戦略室, 特任准教授 (60647254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柘植 あづみ 明治学院大学, 社会学部, 教授 (90179987)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 妊娠・出産 / 出生前検査 / 男性 / 父親参加 / 家族 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで女性の経験として議論されることの多かった出生前検査について、パートナーである男性がいかに関わっているか、2013年から臨床研究として開始された新型出生前検査(NIPT)を手がかりに、調査を開始することとした。 平成28年度は、男性へのインタビュー調査を始めるにあたって、分担研究者である柘植あづみが研究代表者として行った科研費研究「医療技術の選択とジェンダー-妊娠と出生前検査の経験に関する調査」の研究成果である出生前検査に対する医療者(医師およびカウンセラー)へのインタビューデータを再分析するとともに、障碍を持つ子どもを出産した経験のある女性へのインタビューを行い、夫が出生前検査の受検やその後の生活にどういった役割を担い、妻にどのような影響を与えているのかを調査した。それと並行して、国内外の先行研究をレビューした。これらを踏まえて、調査項目を洗い出し、インタビューガイド(初版)を作成した。インタビューガイド(初版)を含めた倫理申請書を作成し、当時研究代表者の所属していた電気通信大学において倫理審査を受け、承認されたのち男性へのパイロット調査を開始した。産科医療への男性参加の歴史的視点や地理的観点から、インタビューガイドをより適切な内容にするため、医療者(医師およびカウンセラー)のインタビューを年度末まで続けた。 医療者へのインタビューは、診療もしくはカウンセリングの現場で間接的にあるいは直接的に男性がどのように出生前検査に関わるのかを知るだけでなく、医療者自身が検査における男性参加をいかに考えているのかを把握する目的があった。医療者の考え方が男性にも影響を及ぼすことも考慮すると、医療者の意見や経験を聞く意義は大きい。また、障碍を持った子どもを出産した経験のある女性たちの語った妊娠・出産における夫の意見や様子などは、調査内容を吟味する上で参考にできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
倫理審査の書類作成および書類審査に時間がかかったため、パイロットインタビューを開始するのが遅れてしまい、平成28年度は1件しか実施できなかった。平成29年度に実施を検討している不妊男性へのインタビュー調査のリクルート方法や対象者の絞り込みに関する慎重な意見、データを共有する際に利用する予定の一般商用ファイルの信頼性に対する懸念が倫理委員会から出されたためである。前者については、実施の見通しが立った頃に再度調査計画を提出するよう求められた。後者については、所属機関の異なる研究者の間でデータを迅速に共有し効率的に作業を進めるためには、学内のデータベースでは機能的に不十分であるため利用を許可されたが、二段階認証や暗号化等の対策を検討するよう求められため、運用上のセキュリティのチェックを引き続き検討していく。 医療者は医師3名とカウンセラー1名、障碍を持った子どもの出産経験がある女性は2名のインタビューを行った。 男性へのインタビューを行うためのインタビューガイドについては、パイロットインタビューを行ったインタビュイーから部分的に厳しいコメントも頂いた。あと4名程度に実施する予定だが、複数個所に修正が必要になると予想される。パイロットインタビューが早期に進むことも予想して、分析ソフトウエアを購入したが、利用できる状況にはならなかったため来年度に活用していく。 また、男性不妊について科研費研究「戦後日本の男性不妊と男性性に関する歴史研究」(研究代表者 由井秀樹)を行ってきた立命館大学の研究班の研究成果を学ぶため、シンポジウム「男性と生殖、セクシュアリティ」に参加した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者の所属が移動したため、倫理審査を再度実施しなくてはならないが、昨年度よりも迅速に通るよう努力したい。審査委員会で承認された後に、すぐにパイロット調査を開始し、本格的なリクルートを開始するとともに、医療者へのインタビューはカウンセラー1名を追加する予定である。平成28年度のインタビュー調査で医師よりもカウンセラーから男性への意見を多く聴取することができたためである。 本調査のリクルートについては、グループ内の研究者各々がスノーボールサンプリングでインタビュイーを探すとともに、研究分担者および研究代表者が関わった上記の科研費研究「医療技術の選択とジェンダー-妊娠と出生前検査の経験に関する調査」でつながりのできた医療者にも協力を仰ぐ予定である。 進み具合によって、不妊男性への調査を検討する。リクルートは当事者団体や研究者各々の知り合いからスノーボールサンプリングで探していく予定だが、場合によっては新聞などのメディアを利用することも検討している。 秋の学会には間に合わないが、平成29年度内に一度発表の機会を得たいと考えている。学会内の勉強会に加えて、他の研究班とのコラボレーションも含めて検討したい。
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Causes of Carryover |
パイロットインタビューが順調に進まなかったため、データ管理用のPCを購入しなかったためである。加えて、それに伴う分析ソフトも当初研究グループ各人向けに購入する予定だったが、代表者1名分がテスト的に購入したのみだったため、物品費が余った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ管理用のPCについては、研究代表者の所属が変わり研究環境も前所属機関とは異なるため、再度検討したい。購入しない場合には、その分をインタビューの謝金や旅費とする予定である。また、次年度に研究分担者の増員を検討しているため、分担金としても使用する可能性がある。
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