2016 Fiscal Year Research-status Report
法律相談の相互行為分析-対話的相談時代の専門職間コミュニケーションの研究
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16K13421
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Research Institution | Kobe City College of Nursing |
Principal Investigator |
樫田 美雄 神戸市看護大学, 看護学部, 准教授 (10282295)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
米田 健一 鹿児島大学, その他の研究科, 教授 (20283856)
北村 隆憲 東海大学, 法学部, 教授 (00234279)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 即時分析 / 法律相談 / 相互行為分析 / エスノメソドロジー / 会話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「即時分析(相互行為分析の高速版)」という新手法で、日本における「法律相談」の21世紀的状況を、「専門職-専門職」関係という新視点から、明らかにすることであった。 初年度は、この立場から、科研メンバー全員が集まっての研究会を2回開催し、ブレーンストーミングを行った。その結果、「専門職-専門職」関係として、従来アイディアが上がっていた「弁護士-土地家屋調査士」関係以外に、対比対象として「弁護士-企業法務担当者」関係や「企業法務担当者-企業法務担当者」関係をも、扱った方がよいのではないか、ということとなった。そのため、この比較対象群の状況を理解するために、何冊か、関連書(たとえば、経営法友会編著『企業法務入門テキスト』等)の輪読会を行うこととなった(この部分は、平成29年度の活動への継続課題となった)。 また、夏期には、K大学司法政策研究センターにおいて、夏合宿を、3泊4日で行った。この合宿では、「弁護士-土地家屋調査士」関係の探求のために、模擬法律相談をロールプレー的に実施し、撮影と検討会を行った。まだ未確定ながら、専門家同士の相談業務においては、どの項目がどちらの専門性に属するのか、について「棲み分け提案」が相互行為分析内で頻繁にやりとりされているようだった。 学会関係では、『臨床法学教育学会』および『日本社会学会』の活動に積極的に参加し、法学教育との関係や、専門職論との関係について、情報収集と企画提案を行った。 また、「弁護士-企業法務担当者」関係や「企業法務担当者-企業法務担当者」関係を探求するにあたって、経営法友会とコンタクトをとった。 なお、上記の課題を探求することは、大きな社会的意義があると考えたため、はやめに学術成果の出版に進む方がよいと考え、出版計画を進めた。具体的には、章立てを考え、必要な作業日程を検討した。総じて、研究は順調に進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究代表者である樫田の在外研修(本務校から米国に派遣された。夏期の2ヶ月のみ)があり、夏合宿は、樫田のいない状態で行われた。しかし、樫田は、9月23日に帰国後、即座に、夏合宿における模擬法律相談の録画データ等を入手し、解析に参加したため、研究の進行に支障は生じていない。 なお、研究代表者は、在外研修期間中にも、派遣先(ウイスコンシン大学マジソン校)の相互行為分析関係者と、本研究課題に関する大量の意見交換を行い、その観点からは、本研究は、促進された面もあるといえる。 上記の「研究実績の概要」にも記したとおり、比較対象群の設定をしたため、調査企画を現在組み直しているが、予備交渉の段階ながら、「企業法務関係者」との関係は良好で、2017年秋には、第1回の「研究報告会兼模擬法律相談ロールプレー」を、「企業法務関係者」との間で実施できる見込みが立ちつつある。 また、研究分担者の米田は、臨床法学教育学会の理事として、研究企画を担当し、来年度あるいはさ来年度の学会大会における研究企画として「専門職との法律相談」関連企画を提起する予定になっている。 さらに、研究代表者の樫田は、日本社会学会のテーマセッション企画者として、以下の企画提案をして採択されている。すなわち、社会学的能力をもった相談者には、既存の制度の紹介にとどまっていては解決が困難な、複雑な社会的問題に関する相談に応ずる力があるのであって、企業法務等において「戦略法務」と呼ばれるような業務も、そういう「社会学的能力を生かした相談業務」である側面がある、旨主張している。この11月の日本社会学会大会のテーマセッションには、研究分担者の米田がエントリーして法律相談における社会学的能力の意義を訴える予定になっている。 これらを総合してみれば、本研究課題の進捗状況はおおむね順調であるといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者である樫田は、2017年5月に日本保健医療社会学会の会長に就任した。また、2016年中途より、医学教育学会の「プロフェッショナリズム・行動科学教育委員会」委員にも任じらレている。まずは、これらの役職を生かした科研運営を行って行きたい。具体的には、本科研で開発される「研究手法(即時分析の応用)」と「研究成果(専門職-専門職相談プロセスの実態の解明)」には、当初からの計画どおり、法律領域以外への応用可能性があるため、保健医療社会学会での「研究手法講習会」や、医学教育学会での「行動科学教育用教材作成」において、本科研の成果を生かしていきたい。 もちろん、研究本体については、2017年夏および2018年夏に、それぞれ3泊4日の夏期合宿を実施し、データの確保と分析の促進をはかる。また、樫田研究室内に養成した、高度な技能を所持した「トランスクリプト作成作業者」には、精密な転写文作成作業をしてもらって、研究支援を行ってもらう。 また、「現在までの進捗状況」にも記したように「専門職-専門職」関係の探求のためには、いろいろな比較群との相互行為の内容比較が必要であるため、樫田研究室が所蔵している多様な相互行為データ(「専門職-素人」データ、「素人-素人」データを含む)の「転写文」作成も必要に応じて行い、この比較用に作成された資料をも用いた「分析検討会」を、各年度中に、2~3回は行う予定である。 なお、対面式研究会に4人の科研メンバーが全員集まる日程を設定しようとすると、なかなか予定を合わせるのが困難なため、研究代表である樫田が、各所(東京地区や鹿児島地区)を個別訪問して、対面的で密度の濃い個別研究会も開催することを検討していきたい。それらの活動の成果をもとに、2017年秋には、企業法務担当者とのロールプレー研究会も開催していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
トランスクリプト作成作業を精密に行っているが、その作業に従事しているものの中に「就職活動」従事者がおり、「就職活動」との兼ねないで、出勤予定日に出勤できない場合が少々あった。しかし、すでに、就職先から内定をえているため、この部分の執行について、現在は問題がない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年4月以降、トランスクリプト作成作業の出勤は予定通り行われているので、その中で、この残額分に相当する作業(トランスクリプト作成作業)も実施される。
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Research Products
(5 results)