2016 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉施設で実践可能な運動協調性向上を意図したスポーツプログラムの開発
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16K13429
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
大山 祐太 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (60711976)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | バルシューレ / Ballschule / 社会福祉施設 / 運動協調性 / 障害者 / スポーツプログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、社会福祉施設において実践可能な運動協調性向上を意図したスポーツプログラムの開発を目指しており、ハイデルベルク大学で開発された「Ballschule (以下バルシューレ)」の導入可能性・有効性の検討をおこなうことを主題としている。 2016年度は、バルシューレの理念や理論、想定される実践効果や社会的意義についてなどを詳細に把握し、今後調査すべき事項や実践時の留意点を明確にし、プログラムの骨子を作ることを主たる目的とした。そのため、関連領域の文献レビューをおこない、ハイデルベルク大学における実践場面及び指導者養成講習の視察、プログラム開発者及び現地指導者に対するヒアリングをおこなった。 また、予備実践として、近隣の障害者福祉施設利用者に対してバルシューレプログラムを提供し(2016年4月~2017年2月;月1~2度)、今後の実践に向けた示唆を得た。例えば、目と手の協応を伸ばす目的で、テーブルでボールを転がしたり、はずませたりして、それをカップで捉えるゲームを実施したが、矮小なスペースでも安全に楽しめることや、ルールがシンプルで知的障害者や自閉症スペクトラム者にとっても取り組みやすいこと、ボールのサイズや扱うカップのサイズを変えるなど慣れてきても飽きない工夫を講じやすいことなどを確認した。 成果の公表は、予てより取り組んでいた幼児を対象としたバルシューレ実践において、特に「自己主張」の涵養に寄与しうることを確認したため、その成果を論文にまとめた(日本アダプテッド・体育スポーツ学会「アダプテッド・スポーツ科学」,2017年6月発刊予定)。また、共同研究者の奥田知靖准教授が、これまでの実践や研究成果をもとに、バルシューレの理論や指導プログラムについて整理した著書を上梓した(「子どものボールゲーム指導プログラム バルシューレ―幼児から小学校低学年を対象に―」,2017,創文企画)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2016年度は、バルシューレの本格実践に向けてプログラムの骨子を作ることを目的としていた。バルシューレの理念や理論、指導者養成方法、想定される実践効果や社会的意義について詳細に把握し、今後調査すべき具体的事項や実践時の留意点を明確化することが達成課題であり、そのためには①関連領域の文献レビュー、②バルシューレ実践の視察をおこなう必要があった。 バルシューレに関する報告は、開発者であるKröger & Roth(1999)論文をはじめ、その理念やプログラムを基にプログラム開発した書籍(木村,2007)、バルシューレが児童の運動能力に与える影響について検討した論文(阿部ら,2008)などがあるが、研究論文はまだまだ寡少であった。そのため、バルシューレに限らず、運動協調性の育成を意図した運動実践や、ボール運動による身体・心理的効果についての文献、我が国の社会福祉施設の運営実態や利用者の健康・生活課題に関する文献も対象に、レビューをすすめた。 また、バルシューレが開発されたハイデルベルク大学において、3歳~6歳までの子どもを対象とした「ミニバルシューレ」や、18か月~3歳までの子どもを対象とした「ベビーバルシューレ」、指導者資格の養成・認定講習会の聴講及び視察をおこなった。さらに、プログラム開発者及び現地指導者に対して、バルシューレ開発の経緯、今後の展望、現在の課題、障害児者に対する指導事例などに関してヒアリングをおこなった。 なお、計画当初は障害児者に対するバルシューレ実践を2017年度から実施する予定としていたが、近隣の障害者福祉施設から協力を得られたため、2016年度から予備的な実践をおこなった。 以上のことから、本研究の進捗状況は「順調」であと判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、バルシューレの視察や先行研究レビュー、予備実践により収集されたデータを踏まえ、社会福祉施設を対象としたスポーツニーズ調査を実施する。これは、仮に開発したプログラム内容が良質のものであっても、福祉現場でスポーツをおこなうにあたっては、事業形態の違い(対象者、生活支援・就労移行、入所型・通所型など)や実態(利用者の数や年齢層、職員数、日々の活動スケジュールなど)、特にスポーツ実践に対する施設職員の意欲や抵抗感が大きな影響力をもつと考えられるからである。よって、社会福祉施設の職員を対象に、事業形態や施設の規模、運動・スポーツの実施状況、スポーツ実施阻害要因やスポーツの意義及びリスクの認識、施設利用者のスポーツニーズの実感の有無など、現実的なスポーツ実践に向けた必要情報の把握に努める。質問紙配布までの手順としては、①既に協力関係にある施設職員・利用者・保護者を対象とした予備調査(半構造化インタビュー)を実施し、②先行研究と①の結果をもとに調査紙を作成し、③調査協力先を確定することとする。当然、すべてインフォームドコンセントを得ておこなう。また、施設職員だけでなく、施設利用者本人やその保護者を対象に、健康課題や運動・スポーツに関するニーズ調査も実施し、多角的視点から実現可能性について検討をすすめる。 調査と並行して、前年度におこなった視察・ヒアリング、文献レビュー、及び障害児者に対するバルシューレ実践によって得られた知見をもとに、実際に社会福祉施設を会場としたバルシューレの実践をおこなう。
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Causes of Carryover |
バルシューレ視察のために積算していた渡航費用が想定よりも抑えられたため。具体的には、協力者によりドイツ国内の移動をレンタカーにておこなうことができ、短期間内に視察すべき場所を全てまわることができるような行程にすることができたことで、滞在期間も短期間で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前庭感覚を刺激するような用具、例えばバルーンやスクーターボード、バブルボールなど、当初予算の範囲では購入が難しかったものの準備することができれば一般的な用具では得難い経験を与えられるような用具を購入したい。スピード感や揺れる感じなど様々な感覚を体験することや、非日常を作り出すことがモチベーションに与える影響など、今後のプログラム開発に向けての示唆を得られると考える。
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Research Products
(2 results)