2018 Fiscal Year Research-status Report
普遍主義に基づく最低生活保障のモデルの政策学的研究
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16K13431
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
平岡 公一 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (10181140)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会政策学 / 社会福祉関連 / 所得保障 / 最低生活保障 / 普遍主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
応募時に設定した課題のうち、戦後日本の社会保障の政策展開と社会保障理論に関する研究課題については、前年度の研究成果をもとに、兵庫県尼崎市の社会保障審議会の活動と同市の独自の政策展開について、社会政策学会第136回大会(平成30年5月)でフルペーパーを提出するとともに口頭報告を行った。この課題については、さらに、昭和30年代前半における自治体の敬老年金制度の導入の背景や意義というテーマ、及び、先進的な社会保障施策の展開における自治体の首長の役割というテーマで研究成果をとりまとめるべく資料の収集と分析に取り組んだ。 欧州等の先進諸国における制度改革の検討の課題については、文献研究の結果を踏まえ、1)福祉レジーム類型との関連での分析、2)自由主義レジームにおいて普遍主義に基づく最低生活保障制度が導入された点に注目する福祉パラドックス(welfare paradox)論の検討、3)選別主義的な社会保障制度により福祉国家が発展してきた「賃金稼得者の福祉国家」モデルへの着目、という新たな視点を導入して検討を進めた。ILO、OECD等の国際機関での議論や政策提案の検討の課題については、グローバルな社会政策のあり方、またその理論的基礎ともなり得るグローバル正義論と関連づけることが、新たな理論的展開につながる可能性をもつことが明らかになった。 関連分野の政策目標との関連の検討という課題については、文献研究の結果、第一に、雇用保障という政策目標との関連の検討も必要であること、第二に、理念・概念レベルの検討より具体的な政策・改革事例に則した検討が有効と考えられることが明らかになり、近年の高齢者雇用政策、子育て支援策と子どもの貧困対策、戦後日本の失業対策事業を事例とした検討を進め、高齢者雇用施策と所得保障との関連については、経済社会学会大会の報告において一部の検討結果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度において2件の学会報告を行うことはできたものの、欧州等の先進諸国における制度改革の検討の課題、およびILO、OECD等の国際機関での議論や政策提案の検討の課題については、新たな独自の視点による研究の展開の方向は見えたものの、研究成果のとりまとめの見通しが経つには至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の項で記述したとおりの一定の研究の前進が見られた研究課題については、その延長線上で研究を進め、2019年度においては、研究成果を、学会報告・論文原稿の形でとりまとめられるよう集中的な取り組みを進める。 「普遍主義に基づく最低生活保障のモデル」と雇用の非正規化・不安定化への対応、および同モデルとベーシック・インカム論との関連については、雇用労働政策とも関連づけつつ、一体的に検討を進めるのが有効と判断するに至っており、その方向で近年の日本の政策展開を事例として分析を進めることを計画している。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)個人的な事情もあって、研究の取り組みに十分な時間を割くことができず、国内外での資料の収集、学会発表・論文執筆への取り組みなどが計画通りに進展できなかったため。 (使用計画)次年度使用額については、主に、取り組みが遅れている研究課題に関わる国内外での資料収集のための旅費、文献購入のための費用、研究成果発表のための英文校閲費用、および学会参加旅費として使用する計画である。
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Research Products
(2 results)