2016 Fiscal Year Research-status Report
大学生における社会的排除/包摂と逆境下成長の過程と要因に関する縦断的研究
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16K13444
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
山崎 喜比古 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (10174666)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小平 英志 日本福祉大学, 子ども発達学部, 准教授 (00442228)
横山 由香里 日本福祉大学, 社会福祉学部, 准教授 (40632633)
野寺 綾 福山大学, 人間文化学部, 准教授 (50709748)
辻 大士 千葉大学, 予防医学センター, 特任助教 (90741976)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会福祉教育・実習 / Sense of Coherence / 不安・抑うつ / アイデンティティ / 逆境下成長 / 主観的ソーシャル・キャピタル / スポーツ系部・サークル活動 / 縦断研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度における研究実績は以下の通りである。 第1の調査の実施とデータベースの作成については、大学生における社会的排除/包摂及び逆境下成長に関する調査を、新入生を含む在校生4,988名を対象として実施し、4,436人の回答を得た。(回収率88.9%)また、ここで得られた調査結果データと、調査対象者の許諾を得た上で、大学が保有する成績や課外活動状況等のデータを統合し、学生状況を総合的に把握できるデータベースを作成した。 第2の学生調査データの解析による研究成果の蓄積については主な研究成果について報告する。まず、大学生の部・サークル活動への参加状況と、ストレス対処力、うつ・不安感との縦断的関連性を検討した研究である。この結果は、「運動疫学研究」第19巻1号に原著論文として掲載された。続いて、青年期後期における逆境体験がそれを通じた成長感、アイデンティティに及ぼす影響について検討した研究である。これについては、日本発達心理学会第27回大会でポスター発表を行った。さらに、学生の精神的健康の変化に対する入学時の主観的ソーシャル・キャピタルの影響について検討した研究である。これについては、日本社会心理学会への投稿を計画している。 第3の大学同窓会との連携による卒業生現況調査の実施については、調査票の回収とデータ入力に計画以上の時間を要したが、年度終了間際に卒業生現況調査の入力データを得た。来年度は、大学生調査と卒業生現況調査の各データを統合し、データベースの充実を図りたい。 第4のInstitutional Research活動との連携については、学生調査の分析結果として、調査実施大学内において、幅広い教職員にフィードバックを実施した。当該年度の結果については、「2016年度版学生像に関する調査分析報告書」として取りまとめた他、学生のメンタルヘルスの関連要因について職員研修等を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では4つの内容(①学生調査の実施と解析用データベースの作成、②大学生の社会的排除/包摂及び逆境下成長プロセスの現状把握と関連要因分析、③卒業生現況調査データベースの設計、④多大学間共同研究への展開)を計画していた。 ①学生調査の実施と解析用データベースの作成については、計画通り、学生の内的要因や外的要因、学生の学習・成長プロセスに関わる項目について、約5,000人を対象として調査を実施し、4,436人からの回答を得た。(回収率88.9%)データベースについては、当該年度における学生調査データとその他大学が保有するデータ(成績、課外活動状況等)を統合した他、2013年度入学者に注目して大学在学期間である4年間を追跡するパネルデータを作成した。 ②大学生調査における現状や関連要因の把握のための分析については、大学生の部・サークル活動への参加状況と、ストレス対処力、うつ・不安感との縦断的関連性の検討や青年期後期における逆境体験がそれを通じた成長感、アイデンティティに及ぼす影響、学生の精神的健康の変化に対する入学時の主観的ソーシャル・キャピタルの影響、自律的動機づけとGPAの相互因果関係、退学学生の特性分析等、多くのテーマ設定の下で分析作業が順調に進んでいる。 ③卒業生現況調査については、就職や転職、キャリア形成、結婚など、社会的包摂に重要なエンドポイントのデータの獲得が計画されていた。これについては、大規模な卒業生調査の実施やデータ入力に計画以上の時間を要したが、年度末に概ねデータ入力を終えた。 ④多大学間共同研究への展開については、参加候補の大学を抽出することができたが、各大学の事情に合わせた学生調査の実施方法について具体的な検討を行うまでには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策として、以下の3点を挙げる。 第1の学生調査の実施とデータベースの作成については、毎年度実施している学生調査を本年度も不備なく継続実施する。現時点では、経年度比較を実現するための調査内容については、大幅な変更はないものと考えている。また、データベースの設計についても、平成28年度と同様、学生調査データと大学保有データ(成績、課外活動状況等)を統合したデータセットと大学在学中(4年間)を追跡可能とするパネルデータを作成する。特に、卒業生現況調査の処理(実査、データ入力)の遅延により、就職や転職、キャリア形成など、社会的包摂に重要なエンドポイントのデータと上記パネルデータの統合を優先して取組むこととする。 第2の解析作業については、これまで順調に進捗している。よって、今後においても、調査結果の経年比較や個別学生の縦断追跡検討により、学業成績や対外的活動、メンタルヘルス等、学生状況の変化に影響を及ぼす内的・外的要因を抽出する。また、これまでに当該大学で実施されている学生支援プログラム(アクティブラーニング等)への参加学生を対象として、参加の前年度以降の学業成績、メンタルヘルス、SOC等の変化を、個別ヒアリングを含めて詳細に追跡する。そして、非参加学生群との比較分析を行い、学生支援プログラムの有効性と一層の改善に関する知見の集積を図る。 第3の多大学間共同研究への展開については、今後も参加大学の更なる拡大を図るとともに、平成28年度に把握した参加候補大学について、各大学の事情に合わせた学生調査の実施方法について検討を進め、平成29年度中にプレ調査を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、学生調査やその他大学保有データ、さらには、卒業生現況調査データを統合した解析に活用するデータベース構築の遅延によるものである。 このデータベース構築の遅延により分析作業の開始が遅れた。分析作業自体は、本研究に関わる研究者の尽力によって補うことができた。しかしながら、分析支援者の支援量や分析結果を検討する研究会など研究者が集う機会の設定が計画よりも少なかったため、旅費、謝金で未使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の使用計画は、平成28年度未使用額と合せて以下の計画とする。基本的な方針として、従来の学生調査のデータセットは基より、卒業生現況調査の統合作業により、データベースの構築を迅速に進めることで、次年度の解析作業の早期着手を目指す。 物品費については、分析強化策として、統計解析ソフトの購入を計画している。また、旅費については、学外の研究分担者や連携研究者が、分析結果を持ち寄り検討する研究会の開催頻度を平成28年度より大幅に増加させることや分析結果の発表や先行研究の把握のため学会へ積極的に参加する。そして、謝金については、解析の更なる強化に向けて、従来の分析支援者の支援頻度の増加依頼や新規分析支援者の参加の促進を図る。
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Research Products
(3 results)