2017 Fiscal Year Research-status Report
認知症の人の生活ニーズを中心とした生活支援モデルの構築
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16K13447
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Research Institution | Kobe Women's University |
Principal Investigator |
清水 弥生 神戸女子大学, 健康福祉学部, 准教授 (80280030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉原 雅昭 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (30264823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 認知症 / 生活支援モデル / 質的データ分析 / 介護サービス事業所 / 職員 / 個別的ニーズ |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症のある人のケアについては、これまで認知症の予防や治療についての研究は蓄積されてきたが生活支援のためのニーズを調査する研究は少なく、認知症とともに生活満足度を保ちながら長く生きるための支援が必要である。本研究では、職員と認知症のある人双方に調査を行って生活ニーズを把握し、認知症のある人が地域で個別的なニーズに基づいた日常生活を選択できるよう生活支援モデルを提示することを目的としている。平成28年度においては、二つの研究班に分かれ研究を行ってきた。研究代表者と研究協力者が調査研究を、研究分担者は文献研究を主に担当した。認知症のある人とその人を担当する職員に対してインタビュー調査を実施して、認知症のある利用者に提供されている自由時間の活動の内容分析を行い、「選択プログラム」を抽出した。職員のニーズ把握の方法や支援の課題についても検討を行った。文献研究の結果を論文一件にまとめた。 平成29年度においても同様に、研究代表者と研究協力者が調査を、研究分担者は文献研究を主に担当した。認知症のある利用者に対して、職員がどのような自由時間中の活動を提供しているか分析したところ、職員の所属施設・機関によって大きな違いがあった。地域との関係が良好で、多様なプログラムを提供できている施設やデイサービス、小規模多機能型居宅介護では、認知症のある人が支援を受けながら地域の中で生活し、より豊かな自由時間活動を行っていることが明らかとなった。研究分担者は、日本で平成16年以降に認知症の本人が執筆し出版した本15冊を比較検討した論文を書き、これは平成30年2月に公刊された。 今後、認知症のある人がサービスを利用しながら個別的なニーズに基づいた日常生活を選択できるよう、生活支援モデルを提示することを目標とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては、平成28年度の研究成果をまとめて国際アルツハイマー病協会国際大会でポスター発表を行い、国内外の研究者や専門家と意見交換を行うことができた。日本地域福祉学会大会においては、認知症のある人とその人達が利用する施設の地域との関わりの重要性を指摘する口頭発表を行った。また、認知症のある人の日常生活におけるニーズを分析し、それを研究論文にまとめた。 研究代表者と研究協力者は、国内での認知症のある人と施設・職員に対する2回目のインタビュー調査を引き続き実施している。なお、平成29年度に予定していたスウェーデンにおける認知症のある人の施設における自由時間活動の支援と地域における支援の現地訪問調査については、日本人研究者の体制とスウェーデン人研究者の体制が合致せず、平成30年度前半に渡航することになり計画を進めている。研究分担者は、概要で述べた研究論文1本を公刊した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度においては、これまでの研究成果を本研究メンバーでまとめて英語論文を作成し公刊を目指す。そのため海外の調査協力者ともスカイプを利用して会議を開く予定である。研究代表者と研究協力者は、引き続き日本国内での追跡調査(2回目)を行い、認知症のある当事者の生活ニーズと担当職員や施設全体がどのように対応しているか、また、それにより利用者にどのような影響があるかを調査する。また、カールスタッド大学(スウェーデン)の研究者の協力を得て、本研究メンバーで認知症ケアに携わる職員の日常生活ニーズの支援に関する調査および地域行政機関へのインタビュー調査を行う予定である。1月から3月にかけては、最終的なモデル案についての討議を行い、モデルの確定を行う。そして、平成30年度の研究成果を報告書にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)基本的に研究計画は着実に進行しているが、スウェーデンでの現地訪問調査が実施できなかったのでその分を次年度に繰り越しすることになった。
(使用計画)次年度には、計画通り認知症のある利用者の日常生活支援に関する国内調査と海外訪問調査を実施する予定である。また英語論文の校正、学会発表のための旅費が必要である。
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