2017 Fiscal Year Research-status Report
障害のある子ども達に活動・参加意欲を芽生えさせるための、音楽形態の構築
Project/Area Number |
16K13448
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Research Institution | Nippon Sport Science University |
Principal Investigator |
中島 龍一 日本体育大学, 児童スポーツ教育学部, 准教授 (90553933)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 音楽療育 / 障害児 / リズム / 編曲 / ピアノ / 打楽器 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、『障害のある子ども達に活動・参加意欲を芽生えさせるための、音楽形態の構築』である。 第1年目の研究成果は、予想していた以上の結果を出すことができた。本来の研究計画第2年目は、第1年目で取得できた障害への音楽介入の効果の調査データを基にICFの「活動と参加」から選択した4項目に基づく分析を行い、障害への音楽介入の環境要因を論理付けることであったが、第1年目の研究を更に深めるために、先行研究として行なっていたスウェーデンでの音楽療育調査と比較することが本研究にとって有益であるという考えに達した。 そこで、平成30年2月16日(金)~22日(木)の間、スウェーデンストックホルム近郊の障害者施設等において日本における音楽療育との比較調査および担当教員へのインタビューを行なった。重度の知的障害者および身体的障害者更生施設(Ekbacken Dagcenter:Ekbackensgrand 6B 172 37 Sundbyberg.)における調査と音楽療育研修、ソルナ市の親切カルチャースクール(Solna Kulturskolan:Blomgatan 3, 169 60 Solna.)での授業研修、討論会である。施設訪問スケジュールのコーディネートおよび通訳は、スウェーデン在住50年以上の福祉専門アドバイザーの澤野正美氏に依頼した。 スウェーデンでの音楽療育は日本のものよりも「個人と家族」との関わりが深く、それらを取り入れた音楽療育モデルプログラムを構築していくことは、有益なことであると感じた。 本研究のために、クラシックの名曲をピアノ用に編曲した楽譜1点と、ブラスアンサンブル用に編曲した楽譜1点、計2点を発刊した。部分的に様々な形態で用いることができるようにした楽譜である。研究計画最終年度に向けて、音楽療育を多角的な視点を持って、更に探求する必要があると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画第1年目の国内調査で得たデータを基に、同じ内容での海外(スウェーデン)における音楽療育調査を行ったことにより、両者の比較は、今後の音楽療育研究において有益であると考えている。国内での研究により、生きることの困難がある子ども達が、音楽の要素の中の「リズム」を楽しいと感じ、「もっと聴きたい・やってみたい」という意欲が芽生え、更に「できた・嬉しい・一緒にやってみたい」という活動・参加意欲が芽生えたことは非常に有意義な調査結果であった。 そこで、海外での調査をすることにより、国内との比較をすることが更に研究を深めるために有益であるという考えに至った。国内調査では、指導者の先導により様々な音楽が子ども達に提供されていたのに対し、スウェーデンにおける調査では、先ず子どもの持つ感性と興味を観察し、その子どもに適合する音楽を提供していたことが一番の違いであった。予め用意されている音楽を使用する日本に対して、スウェーデンではその場で音楽を臨機応変に使用することがなされていた。勿論、本研究は、どちらが良いかということを議論するものではない。両者の共通点は、子どもへの観察力の深さであった。前者は指導者の準備力が問われ、後者は指導者の音楽に対する応用力また技能が問われる。子どもはそれぞれに違い、音楽の適合も様々である。後者の方が、音楽療育を行う上では重要な部分が多々あることを実感した。大変有意義な国外調査であった。 日本における音楽療育調査も、まだ限られた範囲で行なっている現状がある。更に範囲を広げ、様々な施設において調査を行い、比較分析をする必要があると感じた。 以上のことから、第2年目の研究計画は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画最終年度(第3年目)は、音楽療育に関する国内調査(第1年目)と国外調査(第2年目)とで分かり得たことを比較し、日本での音楽療育のあり方への提唱を含めた論文を発表する。当初の研究計画では、ICFの考え方の環境因子のひとつとして「音楽」を位置付け、その「活動と参加」モデルから選択した4項目を用いて、「障害への音楽介入」の環境因子を論理付けることであった。 しかし、音楽療育調査を進めることで、障害のある子ども達一人ひとりの要求する音楽を提供できることが、一番必要だということが明らかとなった。勿論、論理付けは必要なことであるが、本研究においては論理よりも先ず音楽的な面をしっかりと療育の場で使えるようにしなければならないとの考えに至った。海外調査を終えて、日本との音楽療育に対する考え方の違いもはっきりした。このことは、両者の比較と今後の日本における音楽療育にとって有益なことだと考える。 以上のことを論文としてまとめ発表し、その上で、ICFの考え方を用いる研究へと繋いでいきたい。また、使用音楽に関する資料も更に収集し、療育上有効的な部分を抽出し、まとめておく作業も継続する。
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Causes of Carryover |
(理由)海外調査の旅費(スウェーデン)・通訳費・施設調査費・謝金に絞ったため、次年度使用額が生じた。また、海外調査のための打ち合わせ等はインターネットで行なったため、そのための費用の発生もなかったことにもよる。 (使用計画)音楽療育に有効的な音楽資料、著書刊行に必要な楽譜、持ち運びが容易にできる楽器類、調査費として使用する予定である。
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