2016 Fiscal Year Research-status Report
社会福祉内発的発展論を用いた地域福祉としての社会起業論の座標に関する萌芽的研究
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16K13449
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Research Institution | Kawasaki University of Medical Welfare |
Principal Investigator |
直島 克樹 川崎医療福祉大学, 医療福祉学部, 講師 (70515832)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
柴田 学 金城学院大学, 人間科学部, 講師 (20580666)
橋川 健祐 関西学院大学, 人間福祉学部, 助教 (40632691)
川本 健太郎 立正大学, 社会福祉学部, 専任講師 (80580662)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 社会福祉内発的発展論 / 新自由主義と労働 / 再商品化 / 地域福祉と社会的企業 / ソーシャルアクション / 権利の回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度においては、研究目的である地域福祉における社会起業論の座標を明らかにするために、主に以下2点について研究を進めてきた。 第一に、数度の研究会において、地域福祉としての社会起業の理論的な検討を実施した。研究会を重ねる中で、社会福祉学において、特に地域福祉との関連で社会的企業の重要性が認識されてきているが、そのことは必ずしも地域福祉として理論的に深められてきているわけではないことが明らかとなった。また、政治・経済・文化に働きかけることが地域福祉の本来の姿であることを説明する社会福祉内発的発展論を再考することで、社会福祉学においてこれまでなかった社会的企業の分析が可能であること、社会福祉内発的発展論の意義を見出すことが出来た。このことは、社会福祉学における理論的研究として重要であると考えられる。 また、地域福祉としての社会的企業が労働を接点として議論されてきていることを踏まえ、ポランニーやハーレントなどの資本主義、労働に対する先行研究を検討した。その結果、新自由主義的な資本主義の枠組みでは、現代の社会的企業が進める労働への統合が、既存の搾取の構造を補完する恐れがあり、「商品化」→「脱商品化」→「再商品化」といった現象を引き起こしているのではないかという仮説を得ることができた。このことは、政治や経済などの社会レベルに対して、社会的企業が働きかけることができているかどうかが、地域福祉としての社会起業論の指標になりうる可能性を示唆している点で意義があると考えられる。 第二に、理論的な検討を実証的にも検証するため、次年度の本格的な調査に向けた予備調査(関係構築も兼ねる)を実施した。ある一定の人口規模とコミュニティ、住民主体等の先進性も有するNPOがあるなどの条件をクリアした地域を選定、行政等への地域福祉の実態把握やNPO等から活動紹介も受け、本格的な調査の実施が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目においては、予定どおり理論的研究の深化を図ることができ、調査対象の選定もできたことから、概ね研究の基礎部分を整えることができたと考える。 特に理論研究において、これまで地域福祉における社会的企業を、社会福祉の原論的な視野から検討されることはほとんどなかった。理論に特化させた研究会を実施したことによって、地域福祉としての社会起業論の座標が見えてきたことは、順調に進んでいる証と考える。 また、労働等に対する本質的な議論の検討にも踏み込むことができ、「再商品化」のプロセスの仮説を見出せたことも、今後の調査の分析に活かせる視点であり、研究の進展と考えたい。この仮説があることによって、社会的企業のソーシャルアクション性に、地域福祉としての座標を一つ置くことが可能なのではないかと考えられる。この知見は今後の研究にとって意義深いものと言えよう。 本格的な調査に向けた先方との関係が、直接訪問したことで築けたことも大きかったと言えよう。住民主体で事業を展開する社会的企業や、ビジネスの手法を取り入れた社会的企業が一定のコミュニティで混在しており、それをトータルに見ることによって、地域福祉としてどうかという考察が可能となる。そういった対象への調査関係が構築できたことは、極めて重要であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目となる平成29年度においては、これまで重ねてきた理論研究をまとめ、学会発表ならびに論文執筆を行い、論文投稿していくことを目的としていく。また、調査に入るいくつかの社会的企業の事例を分析し、研究分担者と協働して学会で発表することによって、調査で得られた知見を公表していく。 加えて、これまで行ってきている社会的企業の事例をまとめる作業も同時に実施し、事例集としての書籍化も視野に入れた取り組みを進めていく。そのため、さらなる調査先の開拓、関係構築等も進めていく。 本研究は研究のアクション性も視野に入れている点が特徴的であり、行政等も巻き込んだワークショップの実現に向けて、そういった研究会の開催計画も進めていくこととする。
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Causes of Carryover |
旅費を予定よりも安く抑えることができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
先進的な社会的業に関する聞き取り調査を進めていくことへの使用と、これまで蓄積してきた理論研究、調査研究の学会報告等に用いる予定である。
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