2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13459
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
小杉 考司 山口大学, 教育学部, 准教授 (60452629)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 真 広島大学, 教育学研究科, 助教 (50758133)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 統計モデリング / ベイズ統計学 / 計算論的アプローチ / 対人相互作用 / 社会的態度理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,統計学におけるベイズの定理に基づいて集団成員の態度変容モデルを再構築することである。態度変容過程としてベイズの定理を適用したエージェントとしての集団成員が,局所的相互作用によって集団現象を生み出すメカニズムを解明する。本研究ではベイズの定理や事前分布・事後分布といった確率事象に関する統計学的観点を,人間の態度過程そのものを捉える枠組みとすることが特徴である。多くの変数の相関関係から構成概念を抽出したり,構造モデルを当てはめたり,予測値を算出したりする統計技法は,ひとりひとりの人間がおこなう態度形成,因果推論,予期や期待をすることと同じであると考える。これまでも統計技法を認知モデルと捉える研究は散見されるが,個人が事前にもっている経験的情報や将来展望といった心理学的概念をモデル内部に組み込むことができる点で,ベイズ的アプローチの方がより生態学的妥当性が高いと考えられる。
この観点に立脚し,二年目である今年度は具体的な研究テーマとして記憶実験の検証,家族関係調査データに対するモデリング,分布としての態度測定に関する予備的調査実験などを重ねた。記憶実験の実証モデルとしてのベイジアンアプローチは論文としての成果に達したが,家族関係調査データについてはモデリングの自由度が高いため,いくつものモデル・パターンが想定され,現在は論理的妥当性の高いモデルに修練するべく,検討を重ねている。また,態度測定に関する調査については一応の結果が得られ,学会報告に至ったが,実施上の問題点なども見出されたことから,今後も検討を重ねる予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
二年時は当初,態度の時系列的変化をベイズ的に予測するモデルを構築するために,時系列的調査を行う予定であったが,既に得られたデータで類似のアプローチができることから,このデータに新しい分析法でアプローチする手法をとった。その結果,データ収集のプロセスを省いてモデルそのものの検証段階に移れたことにより,いくつかの成果を得ることができた。また初年度に見出された知見から,測定方法を変えた新しい調査アプローチの予備的調査実験を行うことができ,次年度以降の展開に弾みをつけることができたと考える。
当初の計画とは違う形でのデータになったが,研究全体としてはベイジアンモデリングによる態度理論の刷新という基本方針そのままに,理論的にも実践的にも展開できている。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度の目標は,得られたデータに基づいた理論モデルを構築し,数値シミュレーションによる理論的帰結を導出することである。この目標に達するためには,より具体的なモデル化と理論に基づく数式の展開などが必要であることが明らかになった。このより進んだモデルに展開するためには,公理論的な前提・仮定を押さえておくことが必要であり,新しく開発中の測定法と合わせて具体例を示すことが必要である。
理論的な展開を具体的な調査法と事例とのワンパッケージで提案することで,学会全体にアピールする新しいベイジアン態度理論としての基礎理論の構築を目指す。研究期間終了後もこの領域での展開を推進する起点となるような,プロジェクトの発展的解消を目標としたい。
|
Causes of Carryover |
論文校閲費と研究会実施の計画があり,前倒し請求を行ったが,研究代表者の異動に伴い十分な時間が確保できず,未使用のまま繰り越すことになった。次年度が最終年度であるので,予定の通りに執行する予定。
|