2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16K13472
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
岡本 真彦 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (40254445)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分数表象 / 量の類似性効果 / 直後系列再生課題 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、熟達した成人の分数の心的表象がどのような構造をしているのかを明らかにする目的で行われる。近年、分数が数概念の発達や数学的理解の解明に中心的役割を果たす対象であることが指摘されている。しかしそもそも分数が心的にどのように表象されているかに関しては、国内はもとより海外でも検討が進められていない。 そこで本研究では、刺激の心的表象の構造を強く反映する記憶課題の一つである直後系列再生を、分数を刺激として実施することで分数の表象特質を捉え、分数の大小判断や計算課題の成績との関連性についての検討を通して分数の心的表象の構造を解明する。 H28年度は、(1)分数表象は量的感覚を基にした表象であるかどうかを明らかにする、(2)分数の量的感覚の個人差と分数の大小判断課題及び計算課題の成績との関連性を明らかするために、3つの実験を行なった。 実験1の結果、直後系列再生課題の再生成績に量の類似性効果が見られ、かつ、量の類似性効果の大きさと加減算課題の成績との間に相関が見られた。次に、実験2の結果、0.1をまたぐ分数を刺激とした直後系列再生課題の成績では、量の類似性効果が得られたものの、その効果は実験1より減少していた。加えて、実験2では量の類似性効果と計算課題との成績との間には有意な相関は見られなかった。 まとめると、直後系列再生課題において量の類似性効果が得られ、成人は分数の量に基づく表象を持っていることが明らかになった。しかしながら、この量の類似性効果を個人差の指標として、大小判断課題や計算課題の成績との相関を調べたところ、実験1では計算課題との相関が得られたのに対し、実験2では相関が得られず、一貫しない結果となった。この点について、さらに検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2年間で4つの実験的検討を行う予定であったが、本年度中に3つの実験を行っており、当初の計画以上に進展していると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は着実に進展しているが、3つの実験データ間で一貫しないデータが得られている部分があり、今後さらに検討を重ねる必要がある。
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Causes of Carryover |
研究協力者が年度途中に研究職に着任したため、海外旅費の支出が少なくて済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度も複数回の国際学会での発表を予定しているため、海外旅費として使用する。
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Research Products
(3 results)