2017 Fiscal Year Research-status Report
PTAの学際的研究の試み―歴史・文化・当事者の視覚から
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16K13474
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
竹尾 和子 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (30366421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神野 潔 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (40409272)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PTA / 学術研究 / 学際研究 / 教育心理学 / 法史学 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)第二回沖縄県PTAフィールド調査の実施:①教育心理学調査:PTAフィールド調査の実施(場所:沖縄県、時期:2017年7月):4校の単位PTAでの調査を実施した。4校は地域(本土と離島)、歴史(創立100数年以上を迎える学校と新設の学校)、立地条件(米軍基地隣接の学校)等において実に多様な状況にあった。これらの小学校にあるPTAを調査フィールドとし、PTA役員を対象に、PTAの歴史や組織、活動内容や当事者の心理についてインタビューを行った。これにより、これらの要因の相互作用関係を検討した。 ②歴史学調査:史料調査の実施(場所:沖縄県、時期:2017年7月):沖縄県立図書館、琉球大学、読谷村立図書館において、1950年代~70年代のPTA新聞などを中心に、史料収集を行った。これにより、本土復帰以前における沖縄県PTAの具体的な活動や特徴、本土PTAとの関わりなどについて明らかにした。 (2)2016年度PTA研究の分析と報告:2016年度までに行ってきた、PTAの学術的・学際的研究に関する議論について、日米英研究者との2016年度のシンポジウムの成果を踏まえた共同執筆(Takeo, Jinno, Suzuki, Lewis and Omi,2017)を通して、その意味と成果を議論・考察した。 (3)第一回沖縄県PTAフィールド調査の分析と報告:2016年度に実施した第一回沖縄PTAフィールド調査では2校の単位PTAを対象にインタビュー調査中心とする調査を実施した。調査結果を分析し、雑誌(竹尾, 2017)やシンポジウム(竹尾, 2017; 神野, 2017)で報告した。 (4)PTAの今日的課題としての「任意加入」「強制加入」に関する法学的・歴史学的考察を行い、その成果を論文化して報告した(神野・竹尾, 2017)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本プロジェクト開始当初の予定としては、2016年度までに国内調査として東京と地方でのPTA調査を完了し、2017年度までにアメリカでのPTA調査を終える予定だった。しかし、沖縄の広範囲を調査地として確保するという機会に恵まれ、これらの調査地での調査では、日本のPTAの文化的特殊性と国内の多様性を理解・整理するための有益なデータ収集とそれに基づく理論的枠組みの構築が可能であると考えられ、まずは沖縄のPTA調査を2016年度に実施した。2016年度の沖縄調査の大きな成果を踏まえ、沖縄調査の継続的調査を行うことが望ましいと判断され、2017年度には第2回沖縄調査を実施した。これにより、東京調査とアメリカ調査が未着手の状況になった。 また、本プロジェクト開始当初はフィールドワーク研究で見いだされた知見の一般性を明確にするために質問紙調査を予定していたが、沖縄でのフィールド研究の成果を踏まえて質問紙調査を計画する必要があるため、2017年度には実施されていない状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
沖縄フィールド調査:2017年度までの二度に渡る沖縄調査により、歴史・文化・当事者の心理の相互作用により構築された日本のPTAの多様性を理解するための枠組みが確立されつつある。この理論をより頑健にするためには、沖縄フィールド調査の継続が必要である。とりわけ、PTAに携わる人々の活動の全容は、年度を通しての活動を追跡調査することで更なる質的理解が可能になる。よって、同調査対象単位PTAを対象に継続調査を実施する。 東京フィールド調査:現在メディアやネット上で盛んに議論されているPTA問題の多くが都市部にあてはまる可能性が高い。これらのPTA問題を沖縄調査で得られた知見も踏まえて相対的に捉えることが今後の課題である。よって、2018年度では本格的な都市部での調査を実施する。調査地としては、東京都内の都心、郊外、可能であれば離島を計画している。 質問紙調査:本研究の研究デザインは、質的研究を主とするが、得られた知見の一般性を明確にするために質問紙調査に基づく量的研究を行う。調査デザインと質問項目は、それまでのフィールド調査の結果に基づき策定する。 アメリカフィールド調査:PTAの発祥の地であり、日本のPTA誕生に多大なる影響を与えたアメリカのPTAを理解することは、日本のPTAの相対的に理解にも大いに役立つ。加入問題、役員選出、活動内容など、今の日本のPTA問題として取りざたされているテーマを中心にアメリカPTAの当事者にインタビュー調査を行う。
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Causes of Carryover |
本研究計画当初は2017年度でのアメリカ調査を予定していた。しかし、2016年度の国際学会でのシンポジウムによって明らかにされた日本のPTAの特殊性、および、日本国内でのPTAの多様性は実に大きく、その実態を更に明らかにする必要性が浮かび上がった。加えて、2016年度の沖縄調査では、歴史、文化、当事者の心理の相互作用を明らかにするのに極めて有効なデータが得られ、沖縄調査の継続が本研究プロジェクトが目指すPTAの教育心理・歴史的理解に極めて有効であることが予想され、実際に、それを実現しうる調査地を得ることもできた。このようなことから、2017年度に予定していたアメリカ調査を取りやめ、第二回沖縄調査を実施した。これにより、主にアメリカ調査にあてていた予算が次年度使用額となった。
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