2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13484
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河合 俊雄 京都大学, こころの未来研究センター, 教授 (30234008)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
梅村 高太郎 京都大学, こころの未来研究センター, 特定研究員 (10583346)
畑中 千紘 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (30532246)
田中 康裕 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (40338596)
十一 元三 京都大学, 医学研究科, 教授 (50303764)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / プレイセラピー / 過剰診断 / K式発達検査 / 親面接 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された子どもに対してプレイセラピー・保護者面接・検査を行う調査研究を実施し,平成28年度は,その成果から論文3編を発表し,書籍1冊を刊行した。 今年度の補助金は主に,研究実施のためのプレイルームの整備や検査用具の購入,成果発表のための旅費等に用いた。 1. ASDと診断を受けながらもASDとは見立てられない子どもの特徴を,実際の事例に基づき検討した論文を発表した。ASDと見立てられなかった事例がASDと誤診されるに至った要因を抽出し,そのポイントを元に「自己主導群」「摩擦回避群」「他者意識群」「心理反応群」の4群に分類し,各群の特徴を明らかにした。さらに,各群に共通したASDとは異なる特徴として,自他が当初より分化し,内的な他者イメージが存在していることを指摘した。 2. ASDと診断を受けながらもASDとは見立てられなかった3事例を取り上げ,そうした事例のプレイセラピーの展開について検討を行った論文を発表した。各事例はみな自他の区別は成立しつつも,何らかの発達の偏りが見受けられたが,セラピーのなかでリアリティを伴う他者を体験することで,不自然につくられていた一見自閉的なあり方が崩れて内的過程が新たに動き出したり,内面を抱える基盤が形成されたりすることを示唆した。 3. ASDと診断された子どもの保護者面接の重要性について検討した論文を発表した。保護者自身がASD特性を有している事例においては,保護者との密着した関係や保護者の主観的な理解が子どもの問題に影響を与えている場合があること示唆した。このような保護者の面接においては,保護者の影響を考慮しつつ子どもを理解すること,保護者の混乱や困惑を受け止めることが重要なことを指摘した。 4. 本研究成果を一部に含む『発達の非定型化と心理療法』を刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ASDと見立てられない事例を含め,多数の研究協力申し込みがあり,十分なサンプル数の確保にめどが立っている。ただし、まさにこの研究がテーマとしているように、やや本当のASDのサンプルの方が少ないので、医療関係などを通じて偏りを是正していきたい。 本研究調査を通じて得られた成果を元に,研究初年度より論文3編と書籍1冊を発表することができた。書籍には、研究分担者の論文3篇が含まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究協力者の確保はこれまで順調に行えてはきているが,まだ目標とする数には達していない。引き続きインターネットや研究協力機関,あるいはプレイセラピーを受けた方からの評判等を通じての新規の申し込みを受け入れいていく。 また,研究を実施するなかで,子どもが玩具を壊す,プレイルームを退室したがらない,親に不満を言う等の一見ネガティブとも思われる事象が数多く生起し,こうした事象が変容の契機となったり,創造的な展開をもたらす場合もあることが,多くの事例の分析から浮かび上がってきた。そこで平成29年度は、ASDと診断された子どものプレイセラピーにおいて生じてくるネガティブな事象を抽出し,ASD児とASDと見立てられない子どもとでどのような違いがあるのかを検討し,論文を発表する。 また同様に,通常受け身に徹することが推奨されるセラピストが,こうした事例においては積極的に働きかけることが時に重要な要因となることが見出されてきた。セラピストの積極的な働きかけが,ASD児と非ASD児においてどのような意味を持つのかということについて比較検討を行い,学会発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究実施のための用具購入などの経費は、研究代表者の割り当て経費でカバーしたために、3名の研究分担者が研究発表、個別の調査のために使用するはずの経費が次年度に繰り越しとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
3名の研究分担者が、関連する調査、研究発表のために使用する。
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Research Products
(11 results)