2016 Fiscal Year Research-status Report
自閉症スペクトラム障害における優れた記銘および想起の特徴についての探索的研究
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16K13489
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川部 哲也 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (70437177)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 自伝的記憶 / 質問紙調査 / 面接調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の研究実績は以下の4点である。 1)自閉症スペクトラム障害のアセスメントの情報整理:AQ, ADOS-2, ADI-Rなどの心理アセスメントの精査を行った。結果、生育歴の聴取および行動観察によって自閉症スペクトラムの診断がなされる仕組みを知ることができた。今後の調査において、行動面の評価をどのように行うかが課題として浮かび上がった。 2)自閉症スペクトラム障害の臨床事例研究:発達障害の疑いのある臨床事例を担当している臨床心理士を呼び、月に1回事例検討会を実施した。結果、自閉症スペクトラム障害の人の心の世界を知るためには、臨床心理面接によって当事者が言語的・非言語的に表現するものを受け取ることが非常に強力なツールになることが明らかになった。今後の調査に、事例研究の視点をどのように組み込むかが課題として浮かび上がった。 3)自閉症の人の記憶の特徴についての文献研究:カナー、アスペルガー、ウィングらの児童精神医学文献に記載されたた自閉症児の記録を研究し、さらにドナ・ウィリアムズ、テンプル・グランディン、ニキ・リンコ、綾屋紗月、東田直樹ら自閉症の当事者による手記を検討した。結果、記憶の量的側面だけでなく、その優秀な記憶が形成されるに至った個人史、および個人の興味関心の形成過程の分析が重要であることが明らかになった。 4)自伝的記憶についての基礎研究:上記の研究実績を踏まえて、自伝的記憶の一般的特徴の基礎研究を行なった。結果、自伝的記憶においては、時間経過による変容が生じやすい内容と、あまり生じない内容があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の研究計画は、1)自閉症スペクトラム障害(以下ASD)の人の記憶の特徴、特に「優れた記憶能力」についての文献研究と、2)ASDのスクリーニングについての情報整理を行うことの2点を目標としていたが、2点とも計画通りに進捗している。特にADOS-2については、研修を受けることにより検査用具の意義や行動観察のポイントまで情報収集することができ、ASDのアセスメントについての整理を行うことができた。これらの成果により、来年度に向けての調査研究のデザインについて考える材料が揃ったことになる。 また、当初研究計画にはなかったが、ASDの疑いのある臨床事例の事例検討会を定期的に行うことができ、ASDの人の主観的感覚を具体的に知ることができた。そして、これも当初計画にはなかったが、自伝的記憶の基礎研究も行うことができた。以上のことから、全体として本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度も計画通りに研究を進めていく。具体的には、1)非臨床群大学生を対象とした質問紙調査の実施、2)非臨床群大学生を対象とした面接調査の実施。この2つを計画通りに行う。
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Causes of Carryover |
おおむね当初の計画通りに研究費を使用しているが、今回次年度使用額79千円が生じたのは、計画では今年度支出予定であった消耗品費(ICレコーダーなど調査消耗品)の購入を、実際に調査を行う平成29年度の支出とするためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度に調査消耗品費として使用予定である。
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