2017 Fiscal Year Research-status Report
「挑戦できない」大学生への支援モデルの開発:大学に備わる発達促進機能の活性化
Project/Area Number |
16K13490
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Research Institution | Tezukayama University |
Principal Investigator |
森田 健一 帝塚山大学, 心理学部, 准教授 (50634888)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
東畑 開人 十文字学園女子大学, 人間生活学部, 講師 (30747506)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 学生相談 / 高等教育 / アクティブ・ラーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「現代」という時代性を踏まえ、高等教育機関における学生への支援のあり方はいかなるアプローチが適切なのかという問いをめぐって遂行してきた。 現代の高等教育に求められている機能について、様々な取組やスローガンから文科省による提言施策を含めて多角的に調査し、さらに現場の学生相談および学科教育・支援における取組を検討し、有効策の明確化を進めた。後者に関して具体的には、1)教育・支援においてどのようなアプローチを行っているのか、2)学生はどのような反応を示しいかなる変化が生じるのか、3)支援者・指導者側も含めた全体的状況においてどのような事態に遭遇するのかという点に着目して詳細に分析を行った。 結果として以下の点が明確化した。(1)高等教育のあり方が従来から変化し、「サービス機能の充実」という言葉に象徴的なように、教育研究だけでなく学生への全人的関わりが求められていること。(2)全人的関わりは、学生個人の内面の理解・介入が不可避であり、非心理的専門家である多くの学科教員はその運営において戸惑いや困難さを含めた否定的感情が生じることが少なくないこと。(3)進学率の高さは従来では進学へ至らなかった学力およびコミュニケーション力の学生との関わりの機会の増加を含意し、全人的関わりの介入レベルが必然的に深くなること。(4)近年推奨されているアクティブ・ラーニングは、上述のような学生には困難が生じ、それを運営する指導者においても困難が生じること。(5)こうした特徴を客観的に理解することが、従来の方法論に縛られた結果生じる負の主観的感情を緩衝し、有用なアプローチを生み出す基礎となること(このとき、心理学的視点を持つことが有効となる)。(6)さらに、困難な状況は支援者・指導者同士で共有し(ピアによるデブリーフィング)、負の感情を抱える器を作ることが、支援・指導における重要な土台となること。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
学会発表での反応もよく、FD講演を依頼される機会もあるなど、すでに現時点での成果が現場での実践に生かせている。また、本研究の知見は医療での応用についても可能性が見込まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内外の様々な取組について調査を行い、有意義なアプローチの情報収集のみならず、そこで生じる困難な事態にも着目し、より現場での実践に生かせる方法論を提言する。その際、研究代表者および分担者、さらに関係者の大学での日常的支援において成果を実際に援用し、その有効性についても検討する。 2018年5月での全国学生相談学会の大会ワークショップにおいて、本研究の取組や成果について発表し、フロア参加者とのディスカッションを行う。学生相談研究への投稿のほか、著書として出版し、より多くの方へ成果を届けることを計画している。
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Causes of Carryover |
使用額が少なく済んだのは、旅費が想定よりも安く済んだためである。
次年度は本研究で見出した支援モデルに沿った取り組みを行うための運営費用および調査・発表にかかる研究旅費として使用する計画である。
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