2016 Fiscal Year Research-status Report
擬人化研究の知見を応用した心理的問題の理解と共有を促す技法の開発
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16K13493
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Research Institution | Shizuoka Eiwa Gakuin University |
Principal Investigator |
波多野 純 静岡英和学院大学, 人間社会学部, 教授 (10311953)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小堀 彩子 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (00432188)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 擬人化 / アニミズム / 問題の外在化 / ナラティブ・セラピー / 擬人化エージェント |
Outline of Annual Research Achievements |
計画初年度は,本研究計画全体の骨格となる文献研究および理論的研究を行った。文献研究の対象としたのは,社会心理学を中心に展開されている擬人化研究,発達心理学における幼児のアニミズム的思考の研究,情報学やロボット工学で行われている擬人化エージェントの研究,ならびに臨床心理学分野における問題の外在化研究などであった。 文献研究の結果,社会心理学における研究では,擬人化を,人間以外の行為主体(nonhuman agent)に人間のような特性を帰属することと定義しており,擬人化現象がきわめて多様な対象に観察されていることが確認できた。また,情報学や工学分野における研究では,擬人化が対象への理解と親密な感情をもたらす傾向を利用したシステムの開発が進んでいる。そのメカニズムは,発達研究が示唆するように,未知の対象を既有の知識によって理解しようとする類推の一種であると考えられる。 その一方で,上記の擬人化研究とは異なる臨床実践的関心から,問題の外在化と呼ばれる技法が擬人化を活用して開発されており,心理的問題の理解促進のために用いられていた。他の擬人化研究との違いは,擬人化の対象が個人の内的な事柄(感情や対人関係の問題など)であり,それらを客観的に理解するための方法と考えられていることである。したがって今後は,擬人化に適する対象の特徴を整理するとともに,それらを擬人化することによる心理的影響を検討する必要がある。 平成29年度は,多様な心理的問題を擬人化によって表現している言語的資料をインタビュー等により収集し,定性的な分析を行って理論モデルの構築を目指す計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な領域における擬人化研究の文献をレビューし,理論的研究と今後の研究課題を探索する作業が予定通り進展している。また,それらの成果を論文にまとめる作業も予定通りに実施され,すでにレビュー論文は完成している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究によって,多様な対象に擬人化が生じるメカニズムと擬人化の影響に関する理論モデルが探求され,心理的問題への応用可能性が議論された。 その成果をふまえて今後(平成29年度)の研究では,主に大学生を対象にしてさまざまな擬人化表現を収集・分析し,心理的問題の擬人化の過程について基礎的な情報を得るための活動が行われる予定である。 現時点では,擬人化の過程は 3つに分けられると考えている。心理的問題の擬人化による理解・擬人化を用いた表現・擬人化を通じた他者との共有である。これらの過程において擬人化がどのように行なわれ,いかなる効果を持ち,擬人化される内容(心理的問題)によってどう異なるかなどについて,定性的な検討を行う。 ただし,研究分担者が育児休暇を取得したため,面接調査は研究代表者が行う予定である。研究計画書においては,心理的問題に関する面接であるため研究分担者(臨床心理学者)が主に担当することを考えていたが,研究分担者からの助言をもとに実施すれば特段の問題は生じないと判断し,研究代表者が実施することとした。
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Causes of Carryover |
次年度使用額114,745円が未使用となった理由は,主に旅費を使用しなかったことによる。学会出張のための旅費として150,000円を計上していたが,参加予定の学会日程の前後に所属機関の公務が多忙となったため,学会への参加を見送った。学会において収集する予定だった情報は,文献研究および他の研究者との通信によって,おおむね補うことができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
助成金の当初の使用計画については変更はない。前年度の未使用額については,当初計画において参加予定だった学会に今年度参加するために使用する予定である。また,研究分担者が育児休暇を取得しているため,データ入力や資料整理に関して人件費や謝金の支出を増やす可能性がある。
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Research Products
(2 results)