2016 Fiscal Year Research-status Report
生理指標を用いた絵本とJAZZのコラボレーションにおける臨床心理学的介入の検討
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16K13495
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
増田 梨花 立命館大学, 応用人間科学研究科, 教授 (70409316)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 絵本の読み合わせ / JAZZのリズム / 視覚的刺激 / 聴覚的刺激 / 心の健康 / 自律神経系 / 中枢神経系 / 生理学的指標 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は「絵本の読み合わせとJAZZの融合ライブイベント」を通して、絵本や楽器の演奏風景という視覚的刺激、絵本を読み合わせる声や楽器の音という聴覚的刺激、初めての絵本や初めての楽曲(JAZZ)に出会うという新奇性や非日常性、そしてライブで絵本の読み合わせや演奏を味わうという直接的な接触感が人の心の健康の回復・維持・増進に有効な手段であることを生理学的指標を用いて科学的に証明することを目的として、東日本の復興地や熊本、及び復興地から転居してこられた家族の住む、京都や東京、埼玉で「絵本の読み合わせとJAZZの融合ライブイベント」を実施した。その結果、以下3つの項目について明らかにすることができた。 1、「絵本の読み合わせとJAZZの融合ライブイベント」の体験が生体に与える影響、特に自律神経系活動や中枢神経活動に与える影響について生理学的な指標を用いて実験することができた。 2、 JAZZのリズムと心拍変動の相関関係を検証するための実験を行うことができ、同時に、和太鼓のリズムと心拍変動の相関関係も検証するための実験を行うことができた。従って、JAZZと和太鼓とのリズムの比較検討も検証する実験を行うことができた。 3、 実験前後の参加者の塗色の変化に関する実験を行うことができ、今後生理学的指標との相関関係を検証するためのデータ収集を行うことができた。以上の1から3の実験の途中経過報告を日本学校保健学会(茨城県つくば市 筑波大学)と日本ピア・サポート学会(沖縄県那覇市 沖縄県総合福祉センター)にて発表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東北地方の復興地で6箇所、及び復興地からの転居し関東地方や関西地方で暮らしている人々を対象に3箇所、さらに平成28年度に起こった熊本地震の震源地の益城町や御船町の仮設住宅等を中心に6箇所で「絵本の読み合わせとJAZZの融合ライブイベント」を行い、そこでデータを収集を行った。 本研究ではインタビュー調査の他に客観的な指標として生理学的指標を用いて実験を行った。具体的には、実施前後の生体の自律神経系活動や中枢神経活動を反映した感性情報として、サーモグラフィーにて鼻部上部の表面皮膚温度を、心拍変動測定器にて心拍変動をそれぞれ測定する。また、深層心理に与える効果も考えられることから、絵画療法(投影法の一種)における人物画の塗色(人物彩色法)を用いて、対象者の実験前後の塗色の変化過程を記録し、塗色のデータ収集を行った。さらに、実験の途中経過報告を日本学校保健学会(於:筑波大学)と日本ピア・サポート学会(於:沖縄国際大学)にて発表することができた。 現在は収集したデータを元に、絵本とJAZZが生体に与える影響、深層心理に与える影響等を検証し始めたところである。特にデータ検証にかかわる医学的データ解析(心拍変動)は日本大学医学部小沢友紀夫教授他MJG心血管研究所の研究員に、人物画の塗色(人物彩色法)は広島国際大学の寺沢英理子教授に協力をお願いし、分析をしていただいているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、[絵本とJAZZ]の臨床心理学的効果を生理学的観点から裏づけようという試みであり、平成28年度には東日本の復興地等15箇所にてデータの収集を行う実験を試みた。 そのデータより、以下3つに示すような結果と意義が期待され、平成29年度は収集したデータを詳細に分析し、結果を導き出すこととする。 1、 サーモグラフィーと心拍変動測定器による計測の結果、鼻部上部の表面皮膚温度の上昇や心拍数の減少(交感神経優位から副交感神経優位な状態に変化)が推測され、データ分析を行ない、リラックス効果を実証する。 2、 JAZZのリズムと心拍変動の相関関係を実証し、自律神経系の安定が促されたことを実証する。 3、 サーモグラフィーの温度変化と塗色の変化には強い相関関係があると推測され、絵本とJAZZの融合が心理に及ぼす影響の一端をデータを解析して明らかにする。 本研究で実施する実験では、ライブイベントを通した、絵本の読み手や演奏者を含めた参加者全員の一体感や共有感、絵本も音楽も受動的に味わえばよいという心理的な負担の少なさ、絵本とJAZZの融合による理解度の向上や感情移入が可能になることなどの理由から、多数の刺激や要因により、絵本も音楽も両方を楽しむことができる。これは、これまで実証されてきた絵本や音楽の効果をさらに高めることにつながると思われるため、本研究で臨床心理学的な意義についても明らかにしたい。 また、上記のことをインタビュー調査で収集した参加者の逐語を分析し、結果の裏づけになるように質的な研究も行いたい。さらに、以上の研究成果を平成29年度、8月に行われる国際表現性心理学会(中国、蘇州大学)や10月に行われる日本ピア・サポート学会(広島大学)で口頭発表を行う予定である。
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