2016 Fiscal Year Research-status Report
孤独死防止へ向けての高齢者の心理特性に着目したアセスメント・ツールの開発
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16K13498
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
山崎 久美子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究, その他, 准教授 (30200653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
逸見 功 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (50173563)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 孤独死 / 高齢者 / 心理特性 / 見守り相談員 / 見守り支援利用者 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度に実施した研究の成果は,1.文献検討,2.見守り相談員(見守り活動の経験者)6名を対象としたインタビュー調査の分析と考察, 3.見守り支援利用者8名を対象としたインタビュー調査の分析と考察, の3点である。 まず, 「孤独死(あるいは孤立死)」に関する研究を洗い出すにあたり, 孤独死(あるいは孤立死)に関する文献を各種データベースにて検索した。医学中央雑誌Web版ver.5, CiNii, Medline,CiNahlを用いて検索したところ,延べ257件の文献がヒットした。9つの基準を設け,該当文献を除外したところ,(1)孤独死予防への取り組みや社会的支援に関する論文8件,(2)孤独死の現状や背景について言及した論文10件,(3)孤独死の疫学的考察1件,(4)孤独死高齢者の特性について考察した論文4件,(5)法医学的調査研究5件の計28件で,5カテゴリーに分類された。なお,原著論文は計10件であり,「孤独死」を論じているものと「孤立死」を論じているものに二分される。10件の論文はすべてが横断研究であり,孤独死(あるいは孤立死)とその関連要因との因果関係を分析したものはなかった。 次に,見守り相談員を対象としたインタビュー調査から,「孤独死防止へ向けた高齢者の心理特性に関する研究―(1)見守り相談員からみた見守り支援利用者のポジティブな特性,(2)見守り相談員からみた見守り支援拒否に関連する高齢者の心理特性」をまとめ,孤独死防止のための見守り支援の利用者を対象としたインタビュー調査から,「孤独死防止へ向けた高齢者の心理特性に関する研究―(1)見守り支援利用者が語る自身のポジティブな特性」をまとめた。 以上から,「孤独死研究の動向と今後の課題」が明らかとなり,また孤独死防止へ向けた高齢者の心理特性(ポジティプな特性/見守り支援拒否に関する特性)をリストアップできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては,研究計画段階で立案されたすべての研究をほぼ終了した。それらは3つで,(1)「孤独死(あるいは孤立死)」に関する文献レビュー,(2)見守り相談員(見守り活動の経験者)および見守り支援利用者を対象としたインタビュー調査の実施ならびに分析と考察(ただし,見守り支援利用者が語る見守り支援拒否に関連する高齢者の心理特性についての分析・考察はこれからである),(3)孤独死に関する高齢者の(心理)特性についての項目のプール,であった。 なお,国内外の報告書や新刊書などの引き続きの取り寄せは今後の作業である。しかしながら,国内で刊行されたものはきわめて限られており,海外では孤独死(「kodokushi(lonely death)」という現象がほとんど重視されていないことが判明したので,これらの作業による成果はあまり期待できない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究計画は,1.データのカテゴリー化によってプールされ,整理された項目を反映させた,孤独死防止へ向けた高齢者の心理特性に関するアセスメント・ツールの作成,2.地域で生活する高齢者(一人暮らし高齢者200名を対象として含む,一般高齢者400名を対象とする)を対象にしたアンケート調査の実施ならびに尺度の信頼性・妥当性の検証(因子分析による構成概念妥当性の検証,内的整合性および基準関連妥当性の検討),3.研究の総括および成果の公表(学会発表ならびに論文の執筆)を行う。 具体的には,見守り相談員および見守り支援利用者を対象としたインタビュー調査から,心理特性に限らずに,内容が似ているデータをカテゴリー化したところ,(1)見守り相談員からみた見守り支援利用者のポジティブな特性については35のカテゴリー,(2)見守り相談員からみた見守り支援拒否に関連する高齢者の心理特性については38のカテゴリー,(3)見守り支援利用者が語る自身のポジティブな特性については31のカテゴリーが抽出された。今後は,見守り支援利用者が語る見守り支援拒否に関連する高齢者の心理特性についてのカテゴリーを加えた上で,これら4つの視点を総合して得られたカテゴリーの抽象度を上げ,アセスメント・ツールに使用する項目を厳選する。その際には,理論的枠組みの組み立てとそれに基づいた項目の選定を行うことになる。アセスメント・ツール案(5件法の評定法)を作成し,パイロットテストを実施する。本ツールの対象者となる高齢者5名程度を選んで,尺度への回答を求め,回答後にインタビューを行い,使用感など意見を聴取する。パイロットテストの実施を受けて,再度調整し,暫定版を完成させる。 さらに,国内で孤独死防止対策が行われている地域等において,取材(研究情報収集)を行い,情報収集によって得られた知見を研究の総括に反映することも視野に入れる。
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Causes of Carryover |
インタビュー調査の実施にあたり,ICレコーダーによる音声記録を行なわず,筆記記録にした。従って,インタビューデータのテープ起こしに係わる人件費が不要となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
1.設備備品費:パーソナルコンピュータ,ソフトウェア(統計ソフトSPSS一式・その他),プリンター,シュレッダー,図書費(洋書)等。2.消耗品費:アンケート調査票の印刷費,アンケート調査票回収のための郵送代,アンケート調査票封入のための封筒作成費等,図書費(和書),トナーカートリッジ,学会発表ポスター用ロール紙等。3.謝金:アンケート調査への回答協力に対する謝金。4.旅費:研究情報収集(取材)のための交通費および宿泊代,学会学術大会参加のための交通費および宿泊代等。5.その他:学会参加費,文献複写費および取り寄せ代,文房具,論文抜き刷り代等。
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