2017 Fiscal Year Research-status Report
孤独死防止へ向けての高齢者の心理特性に着目したアセスメント・ツールの開発
Project/Area Number |
16K13498
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Research Institution | National Defense Medical College |
Principal Investigator |
山崎 久美子 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, その他, 准教授 (30200653)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
逸見 功 日本赤十字看護大学, 看護学部, 教授 (50173563)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 孤独死 / 見守り支援 / 支援受け入れ / 支援拒否 / 一人暮らし高齢者 / 心理特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度のインタビュー調査結果から得られたデータをカテゴリー化(ほぼ同じ言及を統合)したところ、6名の見守り相談員が語った利用者の支援受け入れに関する特性は35カテゴリー(データは延べ120)にまとめられた。また、8名の支援利用者が語った利用者の支援受け入れに関する特性は31カテゴリー(データは延べ147)にまとめられた。一方、6名の見守り相談員が語った利用者の支援拒否に関する特性は31カテゴリー(データは延べ93)にまとめられた。また、8名の支援利用者が語った利用者の支援拒否に関する特性は47カテゴリー(データは延べ182)にまとめられた。従って、インタビュー調査から得られたデータは最終的に延べ144カテゴリーとなった。その結果を受けて、「支援受け入れに関する心理特性」および「支援拒否に関する心理特性」からぞれぞれ5つのコアカテゴリーが得られた。すなわち、前者については、「人間関係形成力(新しい人間関係を築ける力)」「受援力(支援を受け入れ活用する力)」「コミュニケーション力(相手に敬意を払い対話する力)」「他人を信頼する力」「老人力(老いてなお前向きに生きる力)」と表される上位概念に、後者については、「自立願望」「対人関係回避」「心理的不安定」「人間不信」「内向性」と表される上位概念にまとめられた。 さらに、インタビュー調査から、見守り支援利用者は受けている支援に満足しており、支援の継続を望んでいた。言及された理由をみると、一人暮らし高齢者の欲求の充足や心配への手当てがなされていることが分かり、見守り支援が一定の効果をもっていることが明らかになった。同時に、孤独死防止へ向けての見守り支援制度が有効に機能しない理由の一つとして、一人暮らし高齢者の支援拒否の心理特性が挙げられるが、見守り支援の妨げにつながる別の要因についても視野に入れておく必要があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アセスメント・ツール開発とレーダーチャート作成に向けて、配慮を要するカテゴリーおよびコアカテゴリーを除外した上で、採択するカテゴリーおよびコアカテゴリーを決定し、研究計画時より優れた研究デザイン(パイロットスタディは倫理審査後)を組んだが、「アナログ研究」に対する理解が弊校倫理委員会からは得られず、アンケート調査実施には至っていない。一人暮らし高齢者候補と言える高齢化した民生委員を対象に、自己評価式ならびに他者評価式の回答手法を採用することで、自己および他者評価のどちらにも耐えられるアセスメント・ツールを作成したいと考えている。(見守り支援を受けている高齢者の平均年齢は非常に高く、侵襲性が高い(倫理的配慮が必要と考える)という観点から調査対象者の変更に至った。 最終年度の研究計画(学会発表ならびに論文作成)をすでに前倒しして行ったので、全体としてはそれほど遅れているとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況欄に記載したように計画時より優れた研究デザインを組むことが可能となった。そのような研究デザインで調査を行う協力が全面的に得られたからである。具体的には、高齢化した民生委員(コホート研究採用)が自身が支援した一人暮らし高齢者を思い浮かべてその高齢者の心理特性を評価し、続いて、自分の場合を評価し、併せて併存的妥当性を検証する調査票に回答する。このような手法は交叉妥当性についての検証を可能にするので、自己評価にも他者評価にも耐えられるアセスメント・ツールになる。見守り支援を受ける高齢者にとっては自記式は限界があるので、支援員による評価および振り分けが現実的でもある。本研究では、「高齢者の人とつながっていられる特性」のパターンを整理することも目標のひとつに置くことにした(これは当初の計画になかったが是非必要と認識するに至った)。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由:研究の最終段階であるアセスメント・ツール開発とパターン分析の研究に対し、倫理審査を通過することができないために取り掛かるに至っていない。よってこれらの研究を遂行する上で使用することになる経費を使用していない。 今後の使用計画:アンケート調査(調査票の印刷・製本・封筒)は800名を予定しているので、調査票を広く配布することになる。なお、回収率が低く、有効回答数が分析する上で少ない場合は再度調査票を配布し、協力を仰ぐ。得られたデータは統計ソフトSPSSによって解析されるので、ソフトを購入する。最終段階の研究成果に関する学会発表と論文作成に必要な追加の文献取寄せ代、旅費、謝金(宛名ラベル作成ならびにデータ入力アルバイトへの謝金)、業者による英文校閲代などが予定されている。また、完成したアセスメント・ツールを関係部署にお届けし使用してもらうための経費が必要になる。
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