2017 Fiscal Year Research-status Report
リスクコミュニケーションによる教員/児童生徒/保護者の協働で学校リスクを低減する
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16K13523
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村越 真 静岡大学, 教育学部, 教授 (30210032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美智太郎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20725189)
中道 圭人 千葉大学, 教育学部, 准教授 (70454303)
藤井 基貴 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80512532)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | リスクコミュニケーション / 保護者会 / ジレンマ / 組み体操 / 特別活動論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、リスクコミュニケーションのシナリオ課題によって、リスクコミュニケーションを体験した学生がリスクコミュニケーションに対してどのような印象を抱くか、またリスクに対する考え方をどのように変容させるかを検討した。 教育学部において、教職科目である特別活動論の授業で、けが等が問題になっている組み体操を取りやめるかどうかについて、約20のグループで、学校、生徒、保護者の3役に分かれ、授業者の用意した資料を参考に、模擬的な「保護者+生徒会」を行うという設定で、学校側が双方向的にリスクを伝え、意志決定するという課題を実施した。ジグソー学習法の考えを取り入れ、保護者+生徒会に先だって、3グループの同じ役が集まり、その役の主張について考えを深める時間(エキスパート課題)を取った。エキスパート課題は約20分、模擬保護者会も約20分間で実施された。以上の課題を2クラス、約200人を対象に実施した。 いずれもクラスでも、シナリオ課題の体験によって学生はリスクを保護者や生徒に伝える重要性に気付く感想がみられた。また教育活動におけるリスクに関する9項目からなる質問紙を事前事後に実施したところ、「学校は児童・生徒の安全・安心を確保し、健全に教育を受けられる場所でなくてはならないので、リスクがあってはならない」「子どもたちが成長するために必要なことであってもリスクは避けるべきである」において、有意な低下が観られた。すなわち、シナリオ課題によって、教育活動におけるリスクに対して許容的になるという結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では、先進事例についての情報収集を実施する他、教員養成課程の教職授業でリスクコミュニケーションに関するシナリオを用いた演習を行うことで、リスクコミュニケーションの効果をリスクへの価値観やリスク判断への理解という観点から検討することとなっていた。このうち、教職授業でのシナリオ演習については、概ね予定通り実施し、課題を実施することによる意識の変容についてのデータを得ることができた。ただし実施した課題は体育的活動(組み体操)に関するリスクに限られており、リスクの性質やリスクとの関わりによって意識の変容が異なるかなど、より詳細な検討を行うまでには到らなかった。 また、これらの成果を踏まえて、実際の保護者や教員を研究協力者として、実際の学校におけるリスクコミュニケーションに近い条件でシナリオ演習を実施し、保護者の視点からもその効果を検討する計画であったが、実施には至らなかった。 以上のことより、「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進捗状況を踏まえて、H30年度は以下の研究を行う。 ①教員養成課程の学生を対象にしたシナリオスタディー。昨年行った自然体験に対するリスクコミュニケーションに加え、生徒指導上の問題に対するリスクコミュニケーションに関するシナリオ課題によって、リスクコミュニケーションを通したリスクに対する意識の変容を明らかにする。これにより課題によるリスクコミュニケーションの特徴も明らかにする。 ②保護者や児童生徒への質問紙調査および仮想課題を通じて、教員以外のステークホルダーが学校活動におけるリスクに対してどのような意識を持っているかとともにリスクコミュニケーションによる学校との信頼やリスクへの意識がどのように変化するかを検討する。計画では学校教員と保護者で模擬課題を実施してもらうこととしていたが、学校の現状を考えると、保護者とともに模擬課題を実施することは難しい。このため、より現実性が高い仮想課題を通じた意識の変化を探ることとした。
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Causes of Carryover |
申請者が、年度後半に別課題により南極地域観測隊に同行し、4ヶ月間の長期出張をおこなったため、計画通りに実験等を遂行することができなかったため。 繰り越された助成金については、本年度の実験実施およびそのデータ処理のための謝金として利用する。
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Research Products
(9 results)