2018 Fiscal Year Research-status Report
リスクコミュニケーションによる教員/児童生徒/保護者の協働で学校リスクを低減する
Project/Area Number |
16K13523
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村越 真 静岡大学, 教育学部, 教授 (30210032)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 美智太郎 静岡大学, 教育学部, 准教授 (20725189)
中道 圭人 千葉大学, 教育学部, 准教授 (70454303)
藤井 基貴 静岡大学, 教育学部, 准教授 (80512532)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 学校 / リスクコミュニケーション / 自然体験活動 / ジレンマ |
Outline of Annual Research Achievements |
文献研究に基づく理論的検討を進めた(担当:中村)。特に,ウルリヒ・ベックらの議論以来,「終わりなき不安社会」の到来と位置づけられた現代社会においてありえる「リスク・コミュニティの可能性」について,主に理論的な側面から模索してきた。その成果として,現代社会では個人化が進む一方で,社会の道徳化そのものの持つリスクが問題として出現し得るという問題に着目し,論文を刊行した(「連帯可能性としてのリスク・コミュニティへの視座--再帰的近代化と道徳のリスクの問題」)。こうした理論的な側面からの研究成果は,様々な機会を通じて学校現場に還元し,とりわけ教科化が進む道徳教育や,教員研修のあり方の検討に活かした。 実践的研究として、村越の担当で学校での体験的活動を素材とした模擬的リスクコミュニケーションの効果検証を、教員養成課程の授業の中で行うとともに、学校教育においてリスクコミュニケーションを行うことの意義や限界を明らかにした。この成果は村越・河合(2019)にまとめた。教職課程においてはリスクコミュニケーションの模擬演習は、生徒や保護者といった異なる立場への理解を促進することや教員としての責任を自覚する上で効果的であることが示唆された。 また、藤井は、学校と保護者・児童生徒とのリスクコミュニケーションが成立する基盤として教師の働き方等に関する質問紙調査を行い、中部教育学会で報告するとともに、同学会に投稿し、査読の結果採択が決定した(『中部教育学会紀要』19号)。また、防災やスポーツを題材とした道徳科におけるリスクコミュニケーションの実践について論文を執筆し、学会誌及び学術書に投稿・寄稿した。本科研によって共同研究をすすめてきた清水町立清水中学校では教師向けの授業手引き書(全66頁)が作成され、地元の新聞で紹介された
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リスクコミュニケーションの理論的研究の基盤の上に、現実に発生しうる学校でのリスクを踏まえたリスクコミュニケーション成立の条件について質問紙、実験的設定などの実証的方法によって検討した。その結果、学校現場でのリスクコミュニケーションの在り方に示唆的であるとともに、教員養成でのリスクコミュニケーションの考え方の有効性を確認することができた。また、実践場面での活用にも一定の成果を得たので、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
現実に近い学校と保護者間のリスクコミュニケーションについて検討する予定である。当初予定していた義務教育レベルでは、現実の学校運営への配慮等からデータ収集が難しいことが予想されている。一方、幼稚園では、活動リスクと発達に資する活動の保証というジレンマは保護者・園の間でもある程度共有されているため、格好のリスクコミュニケーション素材となることが、予備的ヒアリングからも期待されている。 そのため、幼稚園での実施も視野にいれて、現実の保護者と学校との間のリスクコミュニケーションについて検討することを計画する。
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Causes of Carryover |
以下の二つの理由から次年度使用が発生した。①教員養成課程での授業を利用したリスクコミュニケーションの演習を再度実施することでのデータ収集および分析を行う必要があった。②学校現場での、保護者を対象とした聞き取りの調整が年度後半にできなかったため、次年度に聞き取り調査が必要となったこと。 2019年度においては、教員養成課程の特別活動論を利用してリスクコミュニケーション演習を実施するとともに、学校現場での模擬課題を利用した保護者からの聞き取りを実施する。したがって、演習や聞き取りを記録する装置(ICレコーダー、ビデオカメラ)の購入と演習や聞き取りの遂行およびデータ処理のための謝金として使用する。また研究成果の報告書作成のためにも支出する。
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Research Products
(17 results)