2016 Fiscal Year Research-status Report
ゲーム的手法を取り入れた教材によるいじめ防止プログラムの開発と効果
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16K13529
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小田 哲志 愛媛大学, 教育学部, 教授 (00756843)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | いじめ防止プログラム / いじめ事例調査 / いじめ事例教材化 / 児童生徒葛藤場面 / いじめ対応アクションプラン / 授業道徳での活用 |
Outline of Annual Research Achievements |
(実態調査)児童生徒が直面する学校生活等の人間関係等の中で起こる様々なトラブル・いじめについて調査した。いじめ指導の最前線にいる教師が、勤務校で起こったいじめやマスコミ等で報道される象徴的事例以外に、身近で起こっているいじめや人間関係トラブルについてあまり知らないことに対応することを目的とした。松山市いじめアクションプラン作成委員会を発足し、松山市立小中学校85校それぞれいじめ事例について聞き取り調査を行った。 (いじめ事例の整理)聞き取り調査で明らかになった事例を「学校生活」「校外学習等」「登下校中・放課後」「児童クラブ」「部活動」「塾習い事」「SNS等」「家庭生活全般」のカテゴリーに分類した。 (教員研修用資料、いじめ事例の教材化)教材化するために、「事例の概要」「当事者の背景」「関係児童生徒の葛藤」「保護者等の状況」「学校の初期対応」「保護者の反応」「結果」「事例を振り返って」等について、簡潔にまとめる作業を行った。この際にどの学校の事例か判明しないように記述した。これらの事例を使って各学校での研修や学年での話合い等ができるよう、教師向けいじめ対応の事例問題を作成した。 (いじめ対応アクションプラン)いじめ事例問題を中心とした「いじめ対応アクションプラン」を委員が分担して執筆した。 (児童生徒用いじめ防止プログラムの道徳科での使用に関する検討)日本道徳教育学会近畿支部研修会に参加し、文科省から示された質の高い多様な指導法の一つ、問題解決的学習の補助教材として「児童生徒用いじめ防止プログラム」が活用できないか、可能性を継続審議している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
いじめの実態調査を行うために、松山市いじめアクションプラン作成委員会を発足した。児童の精神的な負担に鑑み、当初の予定を少し変更して教員対象調査のみとした。各学校では、生徒指導主事が全教職員に対していじめやいじめに発展しそうな人間関係トラブルについて、どのような事例があったのかを簡単なアンケートや聞き取り調査を行った。これを受け委員会では、各学校の指導主事とやり取りしながら、「学校生活」「校外学習等」「登下校中・放課後」「児童クラブ」「部活動」「塾習い事」「SNS等」「家庭生活全般」のカテゴリーの中で教材化できそうな事例を文書で提出していただいた。このことで市内85校から様々ないじめ,または、いじめに発展しそうな人間関係トラブルの洗い出しを行うことができた。 委員会では、教材化するために「事例の概要」「当事者の背景」「関係児童生徒の葛藤」「保護者等の状況」「学校の初期対応」「保護者の反応」「結果」「事例を振り返って」等について、簡潔にまとめていった。これにより、教員研修等で使える一般化した事例へと作り替えることができた。これらをまとめて、「松山市いじめ対応アクションプラン」を編集した。 3月末に発行・市内小中学校への配布を予定していたが、年度末に配布するデメリットに考慮し、平成29年4月の発行・配布とした。なお、小冊子に掲載できない他の事例は、「松山市学びの森」(イントラネット)の中で、掲載し、松山市立各小中学校で閲覧可能となっている。 一方、ゲーム的手法を用いたいじめ防止プログラムの各問題の試作品を作成し、さまざまな場面で紹介し、その是非について議論を重ねている。日本道徳教育学会近畿支部会合に参加し、このことを紹介しているが、教科道徳への参入には課題がある。
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Strategy for Future Research Activity |
「いじめ対応アクションプラン」の活用をどのように行うかを検討している。松山市教員研修センター生徒指導研修において、この事例集を活用した研修を行うこととしている。この研修により、問題の解答例を完成させる。そして、各学校の生徒指導主事が研修講師となり、各学校での事例研究会の普及を図る。その中で、いじめ加害者、被害者、取り巻く人々それぞれに葛藤場面があり、とっさの判断力がその事例の行方を左右することを理解させたい。また、この結果を論文にまとめ、文書発表または口頭発表することとしている。 本研究における主目的は、様々な問題場面を作成し児童生徒用いじめ防止のプログラムを作成することである。その点に関する取組については、まず、今回提示していただいた事例から、追跡調査を行うこと等を通して児童生徒の葛藤場面を抽出し、この葛藤を用いたゲーム問題場面を作成する。この作業を繰り返し、9場面の問題をそれぞれ数問ずつ作りあげる。これらの集積をプログラムと呼ぶが、そのように実施するのか、ゲーム的手法を確立した上で、この問題を各学校の朝の会や終わりの会で実施し、問題文の修正を加えながらプログラムの完成を図りたい。 作成したプログラムの活用場面については、小中学校の朝の会、終わりの会(短学活)を想定しているが、教科道徳や特別活動のいずれかの場面で活用できないか、学会等で話題提供し議論していきたい。 いじめやトラブル場面で児童生徒がよりよい判断ができるようになるプログラムを完成させることをねらいとしているが、その効果を的確に測定することができる質問紙を定めていない。今後の研究により、どのような方法で効果を測定するのか研究を深め、よりよい評価の在り方を検討していく。
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Causes of Carryover |
いじめ事例集(いじめ・人間関係トラブルにおける葛藤場面を含む)「いじめ対応アクションプラン」の印刷・製本及び松山市立小中学校への配布を、平成28年度内と考えていたが、年度末に配布するデメリットを考慮し、印刷会社への発注を平成28年度とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年4月初旬に印刷を発注し、印刷物が完成し、松山市立小中学校に発送されている。また、4月28日松山市主任会にて、松山市の全教職員に対し本書の活用を促進した。
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