2017 Fiscal Year Research-status Report
教師の自己改革に関する理論的実践的研究-「自己否定」的省察の国際比較-
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16K13530
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田上 哲 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50236717)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 自己否定 / 省察 / 苦手な子ども / 教師の自己改革 |
Outline of Annual Research Achievements |
前(平成28)年度に検討した理論的な仮説である、都合の悪い思考と表現をする子どもに焦点を当てて検討することが教師の自己改革を促す「自己否定」的省察につながるということに関して、平成29年度は、日本国内、大韓民国ソウル市、中華人民共和国上海市において、教師にとって「都合の悪い子ども」「苦手な子ども」に関する聞き取り調査を行った。日本においては、年間を通して、糸島市の小学校中学校の教員、民間教育研究団体に所属している小学校中学校の教員、様々な研究集会や訪問先の学校における聞き取りを行った。5月に大韓民国ソウル市での調査、7月に中華人民共和国上海市において調査を行った。 研究成果については、下記の発表を行った。2017年10月1日に奈良教育大学で開催された日本教師教育学会第27回大会において「教師の自己改革を促す子どもの事例に関する研究」というテーマで口頭発表を行った。この口頭発表をベースに加筆修正を施したものを、論文として九州大学大学院研究紀要(教育学部門)に「教師の自己改革を促す子どもの事例に関する研究」として執筆した。 また研究ならびにこれまで研究成果から派生した問題意識、特に教師にとって「都合の悪い子ども」「苦手な子ども」の観点を取り入れたものとして、次のものがある。2017年10月7日に千葉大学で開催された日本教育方法学会第53回の課題研究「エビデンスに基づく教育と教育実践研究の課題」において、「授業と授業研究の方向性の問題 -事例研究としての授業研究からみるエビデンス-」というテーマで発表を行った。鹿毛雅治・藤本和久(編著)『「授業研究」を創る』(教育出版)において「子どもの思考と人間形成に視座をおく徹底した授業分析の視点から学ぶ」を分担執筆した。「学習における個と集団のとらえ方と人間形成の課題」というテーマの論文が日本教育学会研究紀要『教育学研究』に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請予算の減額ならびに調査対象者の状況を踏まえて、当初の研究目的を実質的に達成することを目指して、3年間の全体の計画を下記のように修正した。1年目(平成28年度)理論研究と仮説の構築 2年目(平成29年度)調査研究 最終年度3年目(平成30年度) 追跡調査研究および研究のまとめ 平成29年度は家人の疾病、治療等のため、長期の海外調査を行うことができず、カナダでの調査は断念したが、国内ならびに韓国と中国での集中した調査において十分なデータを収集できた。それを踏まえて、終年度3年目(平成30年度) は追跡調査研究および研究のまとめをおこなう。 修正した研究計画に照らして、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展している
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、平成29年度の調査研究を踏まえて、追跡調査研究ならびに研究のまとめ、成果全体の発表を行う。現時点では、国内、韓国(ソウル)、中国(上海)において、平成29年度に聞き取りを行った教師について、「苦手な子ども」から学ぶ教師と学ばない教師にはどのような違いがあるのか、「苦手な子ども」から学ぶ教師はなぜ学ぶのか、学ぶことができるか、「苦手な子ども」から学ばない教師はなぜ学ばないか、学ぶことができないかを、参与観察と聞き取り調査に基づく実証的な追究を行い、「自己否定」的省察の実質を明らかにしたい。研究成果の全体をまとめ、国内外の学会において発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
申請額の減額ならびに調査対象者の状況等の変化、家人の病気療養に応じて、研究目的の実質的な達成を目指して、研究計画の修正を行った。今年度は、長期の海外(カナダ)調査を実施しなかったため、旅費ならびに謝金等の支出が少なくなった。 次年度は使用計画にあるように、国内、韓国、中国への追跡調査研究ならびに国際学会での成果発表を予定しているため、旅費ならびに謝金の支出が増加することを見込んでいる。
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