2016 Fiscal Year Research-status Report
教育困難高校における子どもの貧困対策の開発‐大阪・東京の高校プラットフォーム化‐
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16K13534
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
末冨 芳 日本大学, 文理学部, 教授 (40363296)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大阪府 / 高校内居場所カフェ / 東京都 / ユースソーシャルワーカー / 子どもの貧困 / 中退 / 不登校 / 高校生支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の研究実績は3つにまとめられる。 1.大阪府における高校プラットフォーム化に関するインタビュー調査を計画通りに実施し、研究成果をまとめた。またこの研究成果は、平成28年度に財源問題で中断した大阪府高校内居場所カフェ(高校プラットフォーム化の中心となる生徒の課題発見の役割を担う場所)に対する大阪府での事業継続の資料として活用された。 2.東京都におけるユースソーシャルワーカーに対するインタビュー調査を実施した。大阪府とは異なり、校内に居場所となるカフェを設けないかわりに、校内で「遊び人」のように自由に動き、生徒とも形式ばらずに信頼関係を構築することで、高校生支援につなげる手法として評価できる側面を見出した。 3.1と関連するが、子どもの貧困対策の推進体制の中でとくに高校生に対する国と地方の推進体制に課題があることが判明した。具体的には高校段階における地域連携・地域資源活用が義務教育段階と異なり中央レベルでの政策化が不十分であること、また高校段階では就労支援(厚生労働省)、ひきこもり支援(内閣府・厚生労働省)、中退・不登校対策(文部科学省)といった政策領域の重複がある中で、教育委員会から創発されていない政策に対し他省庁との棲み分けが可能なのかどうか、予算化が難しいのではないかといった警戒感がある可能性も推測できる。 それゆえに、高校内居場所のように、地域を超えて政策移転されることが期待されるすぐれた事業であっても、所管官庁が不明確であったり、既存の教育行政の枠組みにおさまらなければ国でも地方でも継続事業化が難しくなってしまうという現状を明確化することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
大阪府庁および東京都庁関係者の好意的なサポートにより、インタビュー調査が順調に進展している。また研究成果の活用も、大阪府においては早期に行われており、大阪府と東京都の高校生支援にたずさわる関係者間でのメーリングリストによる交流も立ち上げることができた。 学会報告も平成28年度に前倒しして実施することができ、研究の進展や成果還元が当初より早いスピードで進めることができている。 論文公開も平成28年度中に達成した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、イギリス調査および教育困難高校にかかわる大阪府と東京都のソーシャルワーカー・支援NPO スタッフへのグループフォーカスインタビューを実施予定である。 また学会報告は前倒しで実施できたので、研究成果を著作として公表予定である。 著作を刊行後に大阪府教育委員会・東京都教育委員会へのフィードバックを実施予定である。
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