2017 Fiscal Year Research-status Report
幼児教育学・心理学・集団形成論・脳科学・生理学から見る身体の協同性への学際的研究
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16K13540
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
弘田 陽介 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (60440963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 菜穂子 大阪総合保育大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90718298) [Withdrawn]
末次 有加 大阪総合保育大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40784046)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 協同性 / 身体 / 相互作用 / 幼児教育学 / 脳機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、幼児の相互作用を集団の中で生まれる身体の協同性という視座から測定・分析・考察している。平成29年度は、前年度に引き続き1)この協同性概念をこれまでの研究蓄積から基礎づけること、そして2)フィールドを得て継続的な実験・観察のベースを確立しようとした。 1)については、研究代表者の弘田は国内外の文献から乳幼児教育学における協同性の含意を抽出した。本年度は特に幼児教育学における模倣、動物および人間の利他性をめぐる諸研究や、V.ガレーゼの論文からミラーニューロンの働きについての研究を精読した。このような基礎研究を元に弘田は、従来より研究してきた子どもの鉄道趣味という現象について多角的に考察し、新書を刊行した。加えて、アートと子どもが接する場や防災教育の場で、どのような協同性のあり方が考えられるかを外部の研究者とともに参与観察し、日本保育学会で発表を行った。また研究分担者の末次は、社会学分野における協同性概念の整理を行い、フィールドワークの手法などを考究している。 2)では、弘田は、前年度に引き続き、大阪市内の私立幼稚園において、協同性を新しい学術的・実証的な視角から調査している。前年度の研究調査を経て、そのデータを検証した。また追加実験として、平成29年9月にかけて、幼児の前頭前野部の酸素飽和度を調べるNIRS(2チャンネル式の近赤外線分光法装置)を用いた調査を、その幼稚園の年長児10名を対象に行なった。そのデータに関しては現在分析中であるが、次年度追加実験を行い、成果をまとめる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
文献調査としては、前年度、基礎づけた協同性概念を脳科学や教育学・社会学などから具体化する作業が進んでいる。また実験調査としては、昨年度末に行った調査データを解析することで時間がかかってしまった。しかし、その実験と得られた知見については、平成29年8月イタリアで開催のヨーロッパ幼児教育学会においてポスター発表を行い、参加者から幼児教育・保育学のみならず、マインドフルネス心理学や教育方法学の観点から様々な意見をもらった。また、この平成29年9月には再度実験を行った。このデータについてはまだ細部に至るまでの検討はできていないが、概要として結果は得られている。このようなことから判断して、「やや遅れている」が次年度にリカバリー可能と考えている。 本年度は叶わなかったが、次年度においては、ビデオデータから身振りや表情における協同性を把握すべく、外部の関連する研究者に次年度以降の研究調査の構築を相談している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、身体論に基づく幼児教育学・発達心理学に、近年進展が目覚しい脳科学による測定を組み合わせ、学際的な幼児教育の観点と方法を開発する。本年度の脳機能調査は前年度の調査における順序効果を検証するものであった。通常でのクラス集団での脳の働きと、通常では行われない教員と子ども単独での脳の働きを比較する対照実験を前年度から行っているが、前年度は単独→集団の順序で行い、集団での酸素飽和度が高まることが示された。本年度はこの順序を逆にして、集団→単独で行った。この場合、集団での酸素飽和度がいくぶん高いものの有意差が見られるものではなかった。したがって、次年度、再度実験状況を整えて、単独時と集団時の比較を厳密に行いたいと考えている。また、本年度新たに追加した研究視角として、ビデオデータから顔認証を行うシステムを用い、子どもの協同性の検証を行うようなドキュメンテーションシステムの開発に着手している。民間のシステム開発者と共同で、大阪府下・東京都内の私立幼稚園・保育園において、このシステムを試用している。まだまだ動画からの検証は、試用段階にとどまるものであるが、今後は、データを増やし、機械学習の精度を高めることで現実の使用に耐えることができるようにしていきたい。また幼児および教員を協同性の場において調査する手法を精査すべく、フィールドワークの手法を確立していきたい。
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Causes of Carryover |
本年度やや余裕をもたせた使用となったが、これは次年度、ヨーロッパでの学会発表(ISCHE 40 International Standing Conference for the History of Education ,Aug. 29-Sep. 1,Berlin)および学会視察(ICRTEL 2018:International Conference on Research in Teaching, Education & Learning, 27-28Aug, Barcelona)が予定として組み込まれているためである。現在、2018年8月から9月にかけて2週間程度、ヨーロッパに滞在し、学会参加および各地の専門図書館・資料館で資料収集を行う。この欄に書くべき使用額は、主にこの渡航のために、使用する。
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Research Products
(8 results)