2016 Fiscal Year Research-status Report
二つ以上の言語環境で育つ子どもの支援体制に関する研究―日系ボリビア人の事例から
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16K13548
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
吉富 志津代 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 研究員 (20608559)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
常田 夕美子 大阪大学, 人間科学研究科, 招へい研究員 (30452444)
津田 守 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 教授 (50163811)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 二言語環境 / 日系ボリビア人 / 言語形成 / 教育環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本語保持の割合が高い在日日系ボリビア人に焦点を当て、二言語環境で暮らしているその子どもたちが、学校だけではなく、地方自治体、地域のボランティア、NPO/NGOから受ける学習支援の内容の総体を把握し、その子どものライフコースをたどり、二つ以上の言語文化環境をいかに活用しているのか、していないのかを考察することを通じて、学校や学外での日本語教育及び母語教育の支援活動の影響について検証し、より良い支援活動のありかたについて検討することを目的としている。 初年度は、東京では東京大学大学院総合文化研究科文化人類学教室の図書室や新宿多文化共生プラザ、および兵庫県でも日系南米人の母語教室などでの資料収集や外国人の子どもへのサポート体制の現状を調査し、神奈川大和市にて9名、愛知県小牧市にて9名、三重県津市にて8名の日系ボリビア人で、日本で教育を受けた若者を中心とした人たちに、来日の背景、来日後の教育環境、卒業後の仕事や生活などについて、ゆっくりと話を聞いた。 また、ボリビア・サンタクルスにて、日本人の移住地二カ所(オキナワ村、サンフアン村)とサンタクルス市内のボリビア日系協会連合会、JICAサンタクルス事務所などを訪問し、日系人の教育環境と現状課題などについて情報交換をし、今後の課題解決に向けた意見交換をした。 日本に住むボリビア出身の日系人子弟の教育について、そのライフコースから浮き彫りにされつつあるのは、教育現場における、言語形成という視点での情報が少ないために、配慮されるべきポイントが理解されず、当事者たちが自尊感情を失い、その能力を十分に行かせていないことが多いということ、そこに何らかのきっかけで言語形成の再構築の道が開けるかどうかが岐路になり、将来の可能性が拓けていくということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日系ボリビア人の居住状態により、当初の計画による調査地から一部変更があったこと、当事者のヒアリングやその保護者および周辺環境の調査等の実施はできたが、当事者の学校時代のクラスの日本の子どもたちのヒアリングに及べなかったことなどにより、計画以上のことは実施できなかったものの、予定していた研究は、おおむね順潮に進展していると言える。 また、ボリビア・サンタクルスにおいて、日系人の教育に関わる多くの教育関係者たちとの情報交換や今後の教育についての意見交換により、今後の実際のカリキュラムについての考え方に新しい視点に気づいてもらえる等、本研究の意義の大きさを実感することもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度にむけて、2016年度の調査のためにヒアリングをした日系ボリビア人たちの周辺の教育環境について、引き続き調査を行うための基盤作りができたので、引き続き、これまでの調査内容を整理した上で、東京都、兵庫県、神奈川大和市、愛知県小牧市、三重県津市にて、当事者のその後の状況をヒアリングし、当事者たちの教育に影響を及ぼした周辺の関係者たちへのヒアリングを実施し、母語がスペイン語でありながら日本語で教育を受けてきた当事者たちの言語形成について、そのライフストーリーについて、さらに深く調査をしていく。 また、ボリビア・サンタクルスにおいては、現在さまざまな支援プロジェクトが実施されている移住地の教育環境の歴史的経緯に着目して調査を続行し、今後の南米における高等教育実施のための日本人学校設立準備にも注目しながら、日本社会における二言語環境で育つ子どもたちへの教育環境への配慮の視点として参考になることをさぐっていくこととする。
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Causes of Carryover |
研究分担者の予定していた調査地への交通費と調査回数に変更があったため、旅費交通費に余剰金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、2016年度と同様の調査地(東京都、神奈川県大和市、愛知県小牧市、三重県津市、神戸市)にて調査をするための旅費交通費に使用予定。
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