2017 Fiscal Year Research-status Report
原子力防災教育を核とした地域創生のためのESDカリキュラムの開発
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16K13578
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
藤本 登 長崎大学, 教育学部, 教授 (60274510)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 放射線 / エネルギー / 環境教育 / 防災教育 / リスク / ESD |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次世代層に対する原子力防災教育を構築するために、昨年度に引き続き学校や自治体等の取り組み状況の調査を行うと共に、次世代層(長崎大学環境科学部・工学部・医学部の学生62名)の原子力等に対する意識調査を行った。また、次期学習指導要領の中学校理科と関連させた放射線・防災教育の提案と授業実践を行った。 その結果、原子力防災教育に関する調査研究では、日本エネルギー環境教育学会の全国大会から、平成28年の52件中1件から同29年の61件中4件(福井、北海道)に増加が見られ、原子力発電所立地県でその取り組みが求められていることが裏付けられた。これらの内容は、福島県教育委員会が策定している「ふくしま放射線教育・防災教育指導資料」の放射線教育と防災教育の一部が取り入れられた形態になっているが、理科や総合的な学習の時間で扱われる放射線・防災学習と特別活動として扱われる避難訓練に大別できる。これらの取り組みでは、UPZ内外の連携や広域避難時の種々の問題に対する課題が示されているが、それを原子力防災教育として体系的に取り扱うレベルには達していない。これに対して、原子力艦船の寄港地である佐世保市内の中学校で、放射線を題材とした理科の授業実践を行った結果、事前に行われた艦船事故に対する避難訓練時の避難行動について、その理由と必要性の理解が大きく進み、学習の意義が生徒のみならず教員にも進んだことが分かった。大学生に対するリスク認知調査から、2014年度と同様に工具使用に関する項目で、工学部とそれ以外の学部生間で有意な差の傾向が見られたが、2014年度の時に有意な差の傾向が見られた遺伝子組み替えや外国産食品にはそれが見られず、PCのバックアップ(PC必携化の影響)と原子力発電所の利用に差が見られ、リスクの定義は「危険を伴う可能性」と危険度と可能性の記述が16.7%に見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
福島県や福井県などの先行的な取り組みは概ね調査し、放射線教育や防災に対する訓練などの状況は把握できた。しかし、結局のところ、UPZ内外の地域間での教育の実施とコミュニケーションを図るためのワークショップの開催といった社会教育的な取り組みが必要であることが再認識できた。また、知識理解を進めるためにも、教育コンテンツの充実が必要であり、そのための機材やカリキュラムは概ねそろえることができた。現在これらを実践研究するための仕掛け作りを行っているところであり、玄海原子力発電所の近隣自治体と企業に打診を試みているところである。また、同様の課題である高レベル放射性廃棄物の最終処分地選定に関するワークショップも行い、資料提示や進行方法などの課題抽出を試みると共に、参加者への当事者意識の持たせ方についても検討を行っており、これらを今後の研究に生かしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
学校における実践については、昨年度に引き続き佐世保市内の学校で行うと共に、玄海原子力発電所UPZ内外でも行う予定である。特に、学校以外や学校を中心にPTAや地域を巻き込んだ形の教育実践を検討・実施を試みると共に、UPZ地域外での実践と意識調査から、事故時の対応や風評被害に対する意識の変化等を明らかにすることで、教育コンテンツやカリキュラムの有用性を検証する。平成30年度の長崎県の防災教育の拠点研究指定地域が壱岐市であることから、長崎県・壱岐市の教育委員会等と連携を図る。
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Causes of Carryover |
本年度、予定していた授業実践が実践校及び地域住民を合わせて確保できず、実施できなかった。また、教材コンテンツの作成補助を予定していたが、学生が確保できなかった。 そこで、平成30年度に長崎県の防災教育の研究指定地域である壱岐市と連携し、出前授業やワークショップを企画する。その計画のための会議と実施に伴う旅費と消耗品費として、次年度使用額である94365円を使用する。
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