2016 Fiscal Year Research-status Report
アクリル絵具による古典的西洋画技法表現の研究および美術教材への展開
Project/Area Number |
16K13580
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
大泉 佳広 宮崎大学, 教育学部, 准教授 (70518646)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 絵画技法 / 教材研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者がこれまで研究してきたアクリル絵具による技法をマニュアル化するために、本年度前半は取材を研究の軸にして活動した。その手順として、初めにプロの画家たちにこの技法で制作された作品の質感と、様々な絵画表現技法との違いについてできるだけ主観的な意見を取集した。専門的に油絵具で制作をおこなっている画家たちにとっても、単純に「油絵具だから重厚感があり、アクリル絵具だから軽い」という使用素材の影響のみで作品の質感が決まるわけではないことが確認された。 次に、これまでのメディウムの調整等のデータをもとに画材メーカにアクリル樹脂の組成等の関係について助言をいただいた。画材メーカーにとっては絵具に対して「安定的な凝固」を第一に求めていることから、この技法のような最終的な画面の質感表現に重点をおいたメディウム調整は未研究の部分も多く、今後の情報交換をおこなっていくこととなった。 さらに、美術系大学教員らに対し、現在絵画表現を学んでいる美術系大学生たちの意識に対してこの技法の有益性を分析していただいた。近年の美術系大学では昔ほどデッサン力を鍛えるカリキュラムを作成しているわけでもなく、また、入学生の受験時代のデッサン量も昔ほどではないことから、写実表現に傾倒する学生を除くと、この技法の有益性について美術系大学生だからといって全てが共感するとは限らないという見解もえられた。 これらの取材から、本年度後半に本研究の中心である「マニュアル作成」の方向性を精査した。「専門性が高い者は理解できるが、基礎力が乏しい者には理解しにくい」では学校教材化することに適していないため、土台となるマニュアル作成の前に鹿児島県立松陽高等学校において技法講座を行い、実際の高校生の反応を取材した。美術の授業のための教材化への道筋を検討するために、現職の美術教員にこの技法を活用した参考作品の制作を依頼した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「基本マニュアル」の作成はやや遅れてはいるが、予想していた学校教材化のための問題点がスタート時から現れてきたため、その対応を現在前倒しをしておこなっている。研究全体を見据えれば「おおむね順調に進展している」を判断できる。 また、様々な方向の専門家から取材を重ねたことから、絵画表現素材に求める性質の多様性も新たに知ることができ、技法の「逆引き」化に向けて客観的なとらえ方が深まった。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度の取材に軸をおいた研究によって、より表現の多角性に対応できる土台となるマニュアルの必要性が感じられたため、「基本マニュアル」の作成が遅れているが、29年度前半でおおむね作成が終了できると思われる。それをもとに29年度後半から3か所での「技法講座」をおこなうことを予定している。
|
Causes of Carryover |
年度末に細かな消耗品の購入をおこなわなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度に細かな消耗品を購入します。
|
Research Products
(3 results)