2017 Fiscal Year Research-status Report
「人種」「民族」の概念をめぐる文化人類学と教育学をつなぐ学際的研究
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16K13587
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
中山 京子 帝京大学, 教育学部, 教授 (50411103)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 人種 / 民族 / 参与観察 / 創られる伝統 / 授業づくり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「人種」「民族」の概念と問題点を整理し、教科書記述の調査、「人種」「民族」の概念をとりあげた教育実践の検討と構築主義的な授業実践開発を行い、文化人類学研究の成果を教育に反映させるための積極的な試みを行うことを目的としている。2年次は、理論研究では、文献リストの作成を進めるとともに各文献のレビューをすること、教材開発研究では具体的な構想をたて議論すること、中間報告として研究会や学会大会などで積極的に報告し、広く意見を求めることを計画した。 (1)理論研究:収集している文献を精査し、「人種」「民族」について教えるための理論を構築するための検討を行った。指導要領が改定される中で、「人種」「民族」に関する言及について調査した。 (2)国内調査:学校教育現場(小・中・高校)における「人種」「民族」に関する授業の実態について東京都内、神奈川県内の小学校に勤務する研究協力者からインタビューを通して引き続き調査した。 (3)海外調査:文化や血の混淆が進むマリアナ諸島を調査地とし、「人種」「民族」に関する意識をインタビュー調査し、自己をどのように規定するのかを考察するための資料を集めた。出自と民族アイデンティティ、人種の捉え方に関し、日本とは異なる様子が伺え、今後収集した情報に考察を加える。 (4)教材開発研究:教材開発にむけての活用可能資料を連携研究者や研究協力者と共有し、「人種」「民族」概念についての教材開発にむけた学習会を開始した。「はだの色」をキーワードとした人種について考える授業について二つの事例報告と、児童の学びの考察を協力者と行った。 (5)実践研究と協議:連携研究者や研究協力者との情報交を行い、調査の方向性の検討、教材開発の性格、教材の選定に関する意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)理論研究:前述の文献リストへの追加、文献レビューをもとに、「人種」「民族」について教えるための理論を構築し、検討を行っている。教科書記述については学習指導要領の改訂をふまえ来年度に行う。 (2)国内調査:学校教育現場における「人種」「民族」に関する授業の実態についてインタビューを通して引き続き調査している。必要に応じて懇話会を開催し、教材開発に向けて意見交換を進めている。 (3)海外調査:アメリカのサンディエゴで開催されるPacific Islander Festival に参加し、太平洋諸島出身者が本土でどのように自らの人種や民族をとらえているのかを調査したいと考えたが、日程の都合がつかず、マリアナ諸島に調査地を変更した。 (4)教材開発研究:教材開発にむけての活用可能資料を連携研究者や研究協力者と共有し、「人種」「民族」概念についての教材開発にむけた考え方を深めることができている。 (5)実践研究と協議:連携研究者や研究協力者との情報交換を行い、調査の方向性の検討、教材開発の性格、教材の選定に関する議論を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画通りを予定している。3年次は、前半は調査活動を継続し、後半には報告書として研究成果をま とめるための執筆作業を行う。 (1)理論研究:「人種」「民族」を教えるための理論を整える。また、日本の社会科教科書記述の問題点を明らかにして改善にむけた視点を示し、教科書執筆作業に反映できるように積極的に発信する。 (2)(3)調査:国内調査に関しては、2年次までにできたネットワーキングを生かして調査を継続する。海外調査に関しては、引き続き「人種」「民族」に関する授業の実態についての情報を集めて調査し、必要に応じてインタビューを行う。アメリカのサンディエゴかシアトル、もしくはフィリピンのマニラでの実地調査を検討している。 (4)教材開発研究:連携研究者や研究協力者との情報交換を適宜行い、調査結果活用の方向性の検討、教材開発の性格、具体的な手順の検討、教材の選定を行い、教材化を進める。教材の示し方に工夫を凝らし、発信力や伝達力を高めるために、従来の考え方に加えてデザイン性を豊かにすることも検討し、専門家の知恵を活かすようにする。 (5)実践研究と協議:連携研究者や研究協力者の協力を得て、構築した理論をもとにして開発した教材を小中高等学校の学校種ごとに実践研究レベルで検討し、学習者の学びの具体的な様子をふまえて、問題点や改善点について人類学的見地と教育学的見地の双方から検討をする。
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Causes of Carryover |
研究活動は順調に進んだが、年度末に研究図書を購入する予定でいたが次年度に購入することとした。
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