2017 Fiscal Year Research-status Report
神経教育学的アプローチに基づく知的障害児の自己決定過程の解明
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16K13593
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
勝二 博亮 茨城大学, 教育学部, 教授 (30302318)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 知的障害 / 意思決定 / 神経教育学 / 選好判断 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年の平成28年度には選好判断に関わる脳波成分であるLPP成分に注目して,健常成人を対象とした基礎研究を行った。平成29年度においては,マッピング処理など新たな分析方法を適用し,論文発表できるよう執筆を進めている。 さらに,知的障害児を対象として,選好判断に関わる脳内処理について検討を行った。知的障害児への適用に際して,個体差が大きいために,個人レベルで検討していくことになるが,個人データを指標とした場合,LPP成分のような事象関連電位(ERP)と近赤外線分光法(NIRS)のいずれを指標とした方が妥当か,予備的な検証を行った。その結果,多チャンネル型NIRSにおいて選好判断に伴う脳活動が前頭領域で捉えうることを確認できたことから,携帯型NIRS装置を用いて二者択一による選好判断課題中の脳活動を検討した。 まず,健常大学生26名を対象として2枚の生物画像を同時呈示し,二者択一で選好画像をボタン押しにて選択するよう求めた。その際,事前質問紙調査で評定された好意度に基づき,呈示画像ペアの好意度差が大きいEasy条件と差が小さいDifficult条件を設定した。その結果,いずれの条件でも背外側前頭前野及び眼窩前頭野で有意なOxy-Hbの増大が認められた。とりわけ,Difficult条件ではEasy条件に比べて顕著な増大が認められ,これらの領域の賦活はより思考的な選好判断に関与していると推察された。さらに,高等部に在籍する知的障害児13名に対しても同様の課題を実施したところ,健常者と同様の反応を示した生徒がいた一方で,Difficult条件になると前頭領域での賦活が認められなかった事例もいることが分かった。知的障害児において,自己決定と称して二者択一の判断を求める場面は多くみられるが,求める課題によっては十分な思考判断に至らずに,安易なボタン押し反応をしている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度においては,前年度実施した選好判断に関わる脳活動の基礎研究を発展させ,知的障害児を対象とした研究を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の成果に関しては,最終年度である平成30年度に国内および国際会議において発表することを予定している。また,LPP成分の基礎研究に関しては,現在論文として投稿できるよう準備を進めている。
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Causes of Carryover |
(理由) 平成28年度に獲得した学内プロジェクト経費により生じた余剰分により,平成29年度には繰越金が発生した。当初の予算額以上には支出できたが,現在執筆作業中の論文投稿が年度内にできなかったことや,想定したよりも旅費や消耗品にかかる金額が抑えられたことにより,次年度使用額が生じたものと考えている。 (使用計画) 平成29年度の研究成果に関しては,国際会議において発表する予定であり,その際の旅費等に充てるとともに,現在投稿論文の執筆中であることから,これにかかる謝金や投稿料などに充当する予定である。
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