2016 Fiscal Year Research-status Report
高等教育機関における自閉症スペクトラム障害への合理的配慮提供に関する挑戦的研究
Project/Area Number |
16K13595
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桑原 斉 東京大学, バリアフリー支援室, 准教授 (50456117)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 自閉症スペクトラム障害 / 合理的配慮 / 精神障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請当初、対象者を”東京大学バリアフリー支援室に配慮の提供を要望した全ての ASD 学生をリクルートの対象にする 。 研 究 参 加 へ の 同 意 の 得 ら れ た ( 未 成 年 者 は 親 か ら の 同 意 も 得 る )、 A S D 学 生 を 対 象 に 臨 床 評 価 ・ 面接を行う”としていたが、合理的配慮に関連して申請の段階で提示した評価項目について、障害者差別解消法施行後、東京大学バリアフリー支援室においては、臨床評価項目として、ルーティンで採用されたことから、セレクションバイアスの可能性を踏まえて、基本的には全数調査が可能な、「バリアフリー支援室支援記録を利用したデータベースの包括的後ろ向き解析」研究の一環として、ASD学生において実施された合理的配慮の要件を評価した。 平成28年度に東京大学バリアフリー支援室に登録された障害のある学生の数は、40名であった。うち、ASDは4名であった。その一方で、他の精神障害を理由として支援を受けている学生の中に、5名のprobable ASD(支援記録に記載のある情報では、DSM5のA項目の基準を満たすが、本人が、ASDによる困難を自覚していないか、本人に告知がされていないため、ASDを理由とした支援に至っていないケース)が、いた。 また平成28年度には、本研究の対象とした合理的配慮の要件を踏まえて、高等教育機関におけるASDを対象とした合理的配慮について、仮想の症例報告(和文雑誌)及び、専門家教育を意図した総説(書籍)を公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請当初、年間10名程度を想定していたが、障害者差別解消法施行後、厳密な障害開示の基に合理的配慮を実施する方針となったところ、ASDを開示して、配慮の要望をしたものが、想定の半数以下であった。一方で、他の精神障害を理由として配慮を要望しているprobable ASDを合計するとほぼ想定通りの人数なので、実際にASDで、合理的配慮の要望を行う学生自体が減じたとは考え難い。 いずれにせよ、開示をしているASDのみで、合理的配慮の要件について、エキスパートによるコンセンサスを得るために、研究期間内に十分な配慮例を抽出することは困難が想定される。
|
Strategy for Future Research Activity |
ASDを理由として、配慮を要望するASD学生が想定された人数よりも少ないが、その一方で、他の精神障害を理由とする配慮を要望する学生を合計すると概ね想定通りの人数であった。 このような、研究1年目の情報獲得の状況と、実際にASD学生の支援を検討する上で、精神障害への配慮について、合理性を確認する必要があることを踏まえ、当初、合理的配慮の指針(草案)の対象をASD学生のみに限定していたが、広く精神障害全般を研究の対象とし、高等教育機関におけるASD学生を含む、精神障害のある学生への合理的配慮の指針(草案)の作成に変更することを検討する。 また、研究代表者が、平成29年4月に浜松医科大学に異動になったことを踏まえ、ADI-R、ADOSによる直接評価による疾患診断を、他医師によるDSM5あるいはICD10による疾患診断とし、また診断評価に配分していた予算を、東京大学と浜松医科大学との交通費に再配分することを検討している。 尚、研究代表者は、東京大学においては、登録研究員としての籍は保持しており、「バリアフリー支援室支援記録を利用したデータベースの包括的後ろ向き解析」研究の共同研究者として、東京大学バリアフリー支援室の支援記録にアクセスする権限は引き続き有している。
|
Causes of Carryover |
研究代表者が、平成29年4月に浜松医科大学に異動になったことを踏まえ、ADI-R、ADOSによる直接評価による疾患診断を、他医師によるDSM5あるいはICD10による疾患診断としたため、ADOS、ADI-Rの購入費用に変更が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
記録の調査、整理は東京大学において行う必要があり、診断評価に配分していた予算を、東京大学と浜松医科大学との交通費に再配分する予定である。
|