2017 Fiscal Year Research-status Report
重度肢体不自由児のインクルージョン促進のための携帯型視線情報共有システムの開発
Project/Area Number |
16K13597
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
宮地 弘一郎 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (40350813)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 流理也 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (40750120)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 肢体不自由 / 視線 / アイカメラ / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,行動表出がきわめて困難な重度肢体不自由児のインクルージョン促進のための,アイカメラとタブレットを活用した携帯型視線情報共有システム(Portable Eyes Sharing System:PESS)の開発を目的としている.本年度は前年度の課題を元に,以下の課題を実施した. 課題1:重度肢体不自由児のアイカメラ使用において,個々の事例の生活姿勢および頭部形状に合ったゴーグルを開発する必要性が重要課題として挙げられた.そこで本年度は,デジタルファブリケーションを専門とする蛭田直氏および村松浩幸氏の研究協力を得て,頭部形状に即したカメラホルダーの開発を試みた.学齢期の重度肢体不自由事例(SMAⅠ型,7歳,生活姿勢は左側臥位)を対象に,3Dスキャナによる非接触の手法で頭部形状を測定し,3Dモデリングソフトと3Dプリンタを用いて頭部前面で固定するホルダーを製作した.結果,床面接触等の影響なく装着することが可能となり,また測定と装着いずれも対象児の不快感等はみられなかった.これらの機器は比較的安価であることから,個々の事例およびその身体的な成長に合わせたゴーグルの開発が可能となった. 課題2:対象児のアイカメラのキャリブレーションにおいて,自身の表情筋運動や眼球運動に関する十分な理解が必要と思われた.そこで,遊びを通して顔を活用する学習指導を継続的に実施した.指導前半では顔の随意運動課題における運動出現と2秒以上の維持が約60%であったが,指導の後半では約90%となった. 以上より,重度肢体不自由児がPESSを使用する上で必要な条件が達成され,またそのための有効な方法論が確立された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画段階では,本年度の研究課題として,健常者と重度肢体不自由児を対象にPESSの試験的実施を行うことを目的としていた.このうち,健常者における基礎検討については,前年度に実施することができた.しかしながら,重度肢体不自由児については,前年度研究成果より当初予定していなかったアイカメラ用ゴーグルの開発の必要性が生じた.そのため,本年度は,簡便な手法で個人用ゴーグルホルダーを製作するための方法論の研究を行った.また,前年度研究より,発達段階の重度肢体不自由児や重症心身障害児の場合,自身の表情筋や眼球を随意的・能動的に操作する学習が不十分なことから,キャリブレーションに影響を及ぼす可能性が示された.そこで,PESSの試験的実施の対象児に対して,援助者の指示に基づいて表情筋や眼球を動かす訓練を実施する必要があると考えた.これらの追加課題を実施したことから,当初予定よりも進捗が遅れることとなったが,本年度の成果より,PESSを重度肢体不自由児に実際に適用する上での課題が解決され,次年度研究の実施が可能となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,研究の最終年度として,PESSを実際に重度肢体不自由児に適用するための研究を実施し,有用性に関する総括と今後の研究課題の整理を行う. 30年度前半は,前年度開発したゴーグルホルダーを用いてPESSの試験的実施を行い,その上で個別学習場面を中心にPESSの活用に関する実践的検証を行う.30年度後半は,集団場面でのPESSの活用に関する実践的検証を行う. これらの成果を総括し,重度肢体不自由児のためのPESS実用版を完成させる.また,PESS私用マニュアルと活用事例集を作成する.
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)当初,重度肢体不自由児へのPESSの試験的実施のための旅費等の経費を計上していたが,追加課題としての開発研究を研究機関において実施したため,次年度使用額が生じた. (使用計画)本年度予定していたPESSの試験的実施のための経費として使用する.
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Research Products
(5 results)