2017 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児の訪問学級を革新するICT特別支援教育システムの実証研究
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16K13603
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
赤滝 久美 大阪電気通信大学, 医療福祉工学部, 教授 (30280811)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三田 勝己 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 機能発達学部, 特別共同研究者 (40100169)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 特別支援教育 / 訪問学級 / ICT |
Outline of Annual Research Achievements |
重症心身障害児(重症児と略す)とは,重度の知的障害と重度の肢体不自由が重複し,日常的な生活介護のみならず,常に医療的な管理を必要とする人たちである。重症児は少なからず重度の障害や合併症のために特別支援学校に通うことが困難である。そうした通学困難な生徒のために,教師が居宅や病院・施設に出向く「訪問学級」があり,週に数回(1回数時間程度)の教育支援が行われている。訪問学級は継続的に教育を受ける機会を与え,生活にリズムと潤いをもたらし,QOLの向上につながる。しかし,最大の課題は,教師と生徒との一対一の関係が長期に続くため,本人には一対多の本来の学級という概念が存在せず,同世代の生徒との交流がない狭いコミュニケーション環境に限定されることである。本研究は,情報通信技術(ICT)を活用して,訪問学級と学校の教室とが一体となった遠隔授業を実施したり,授業以外の学級行事や学校行事にも居宅から参加できる特別支援教育システムの実証研究を行い,訪問学級の役割や意義を革新することを目的とした。 昨年度は,京都府向日が丘支援学校,北海道稚内養護学校,北海道旭川養護学校の協力を得て,現在行われている訪問教育の実態,訪問生徒居宅のICT機器の設置状況について調査を行った。そして,この調査結果を手がかりに遠隔訪問学級での教育計画を策定してきた。本年度は,策定した計画に沿って,約1年間を目途に上記3箇所の特別支援学校で遠隔訪問学級の実証研究を実施した。具体的には,従来の訪問学級の課題学習に加え,学校で行われている課題学習にも幅広く出席する遠隔訪問学級を実施した。また,これまで行われてこなかった朝の会(朝礼)や終りの会(終礼)などの日々の学級行事に遠隔から可能な限り積極的に参加した。さらに,学習発表会や運動会などの全学的な行事に見学のみであっても参加するよう促し,学校側もそのICT設備体制を含め支援を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,その目的を達成するために4つの個別課題を設定して研究を遂行している。すなわち,課題1:現在の訪問学級の実態調査を行い,これを踏まえてICT遠隔訪問学級の計画を策定する。課題2:ICT機器システムを選定し,予備運用を通して技術的課題を解決する。課題3:遠隔訪問学級の実証研究を約1年間実施し,評価データを蓄積する。課題4:実証研究結果を教育的側面のみならず,QOLの向上,介護者の精神的支援や社会参加,教育現場での医療支援の観点から評価する。特に本年度は,課題3:本研究の中核をなすICT遠隔訪問学級の実証研究を確実に達成できたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究の最終年度であり,課題3として位置づけたICT遠隔訪問学級の実証研究で得られたデータを詳細に分析し,課題4である訪問教育へのICTの活用を多面的から評価する。さらに,実用化への問題点とICT遠隔訪問教育モデルを提言したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度の研究費は実証研究データの分析や実用化に向けたICT機器の改良に活用したいと考えている。また,研究成果のまとめとして論文作成を予定している。しかし,交付額がこれまでの2年間より20万円少なくなるので,予め相当額を次年度に繰り越すことにした。
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