2017 Fiscal Year Research-status Report
ナノ超分子化学を駆使した伸縮自在型スポンジ結晶の創製
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16K13609
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
今野 巧 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50201497)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イオン結晶 / 結晶工学 / 超分子化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
カチオン種とアニオン種から構成されるイオン結晶は、通常、極めて固く、スポンジのように自在に伸縮する事はあり得ない。本研究では、ナノ超分子化学を駆使して、カチオン種とアニオン種が巨大な間隙空間を形成するように配列したイオン性ナノ超分子構造体を開発するとともに、圧力や温度などの外的因子に応じて自在に伸縮可能なイオン結晶の創製について検討した。まず、昨年度と同様の手法により、異なる二種類の多座の有機配位子を用いて、チオール基とフォスフィン基が金(I)イオンに直線型に結合した二核錯体を新たに合成、単離した。得られた二核錯体については、各種分光分析や元素分析などにより同定するとともに、代表的な二核錯体については単結晶X線構造解析によりその構造を決定した。これにより、新規二核錯体の錯体配位子としての機能性に関する構造的知見を得た。次に、昨年度得られた反応に関する知見を基に、二核錯体とコバルト(II)イオンを空気中で反応させ、カチオン性の多核錯体を合成した。得られた多核錯体の反応溶液に、様々な無機アニオンや有機アニオンを添加することにより、対アニオン種の異なるイオン結晶の単離を行った。単離できた化合物については、各種分析機器を用いて、それらの同定ならびに物性と反応性の調査を行った。また、代表的な化合物については、X線構造解析に適した単結晶の合成、ならびにその分子構造と結晶構造の決定を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施の概要に記したように、伸縮自在型イオン結晶の構築に有用と考えられる錯体配位子の合成に成功した。また、錯体配位子の構造を単結晶X線解析により明らかにし、金属イオンに対する配位能を確認した。さらに、コバルトイオンとの反応を行い、目的とするイオン性の多核金属錯体の形成を認めるとともに、対アニオン種の添加によりX線解析に適した結晶性化合物も単離した。単離したイオン結晶のいくつかについては、加熱脱水操作に対する構造安定性を確認するとともに、脱水前後の単結晶X線構造解析から結晶の伸縮挙動を認めており、研究は順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
上記で述べたように、いくつかのイオン結晶については、加熱脱水操作に対する構造安定性、ならびに脱水前後の単結晶に対するX線構造解析から結晶の伸縮挙動を認めている。一方、特に脱水後の結晶の構造解析の精度が良くないために、細部の構造変化についてはいまだ不明である。そこで、30年度は、加熱脱水操作に対して、より安定なイオン結晶を作成し、精度の高い単結晶X線解析を行う。また、対アニオン種の異なる他の化合物についても単結晶の合成、加熱脱水操作、および脱水前後の結晶に対するX線構造解析を進める。これにより、水分子の脱着に伴って伸縮可能なイオン結晶の創製、ならびに、この種の構造体の形成に関する指導原理を追求する。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、金属試薬、無機試薬、および有機試薬を購入して実験を実施した。金属試薬や有機試薬は比較的高価であったが、小スケールで実験を行ったため、実験に要する経費が少なくなった。また、数多くの化合物の合成を試みたが、純粋に単離できた化合物の種類、特に単結晶X線解析に適した結晶の種類はそれほど多くなく、そのため、分析機器使用料が抑えられた。さらに、本研究テーマに関するまとまった実験結果も多くないため、本経費での国内会議や国際会議への出席も少なく、そのための経費も比較的抑えられた。 平成30年度は、29年度の残額を用いて、より精度の良いデータを得るために、29年度に確立した実験を大スケールで行う。同時に、対アニオン種の異なる新たなイオン結晶の合成を目指し、比較的高価な有機試薬を購入する。大スケールでの実験を可能とする実験器具類の購入も行う。加えて、得られた実験データの公表および情報収集を目的として、繰越経費を用いて、積極的に国内および国際会議に出席する。
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Research Products
(1 results)