2016 Fiscal Year Research-status Report
金属以外のナノ構造でも赤外吸収の増強は起こるのだろうか?
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16K13619
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
島田 透 弘前大学, 教育学部, 講師 (40450283)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 表面増強赤外吸収 / ナノ構造 / 電子線リソグラフィー / 周期配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、金属ナノ微粒子や不連続金属薄膜の表面に吸着した分子で生じるとされる表面増強赤外吸収(SEIRA)現象が、金属以外のナノ構造、とくに赤外光を透過させる半導体のシリコンのナノ構造でも起こるのだろうかという疑問に答えることを目的としている。 平成28年度は、測定に必要なシリコンのナノ構造作製法の確立を中心に取り組んだ。本研究では、シリコンのナノ構造として、四角柱の周期配列とラインアンドスペース構造とに着目して行った。これらの構造は、定量的な解析が容易であり、大きな増強効果が期待できるためである。シリコンのナノ構造の作製は、シリコン基板上に電子ビームリソグラフィー法によりマスクを作製し、その基板をエッチングすることで進めた。作製には、文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業に参画する東京大学超微細リソグラフィー・ナノ計測拠点の、電子線描画装置(アドバンテスト F7000S-VD02)と汎用性プラズマエッチング装置(アルバック CE-300I)を用いた。作製をするナノ構造の大きさやピッチにより、最適な電子線の照射量やレジストの膜厚が異なるため、それぞれのシリコンのナノ構造作製に最適な条件の決定に取り組んだ。電子線照射量やレジストの膜厚を変化させて、さまざまな大きさとピッチのシリコンナノ周期配列構造の作製を行った。現在、作製したナノ構造の詳細な評価を弘前大学の機器分析センター所有の走査電子顕微鏡(日本電子 JSM-7000F)を用いて実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度の主たる目的は、測定に必要なシリコンのナノ構造の作製法の確立であった。作製条件の検討の中で、予想外の装置トラブルや基板断面の切り出しの失敗があり、当初の計画に遅れが出た。しかしながら、今後の研究計画を進めて行く上で必要なものであるため、作製条件の検討を慎重に進めた。平成28年度内の作製法の確立には至らなかったが、おおむね計画通りの構造が作製できていることが走査電子顕微鏡で確認できている。以上を考慮して、進捗状況は「やや遅れている」という判断をした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、さまざまな大きさとピッチで作製したシリコンナノ周期配列構造の走査電子顕微鏡による観察結果を詳細に検討することで、それぞれの構造の作製に適した電子線照射量の決定を行い、平成28年度に終わらなかったシリコンのナノ構造の作製法の確立を早急に済ませる。確立させた作製法をもとに、赤外吸収の測定に必要なシリコンのナノ構造の作製を大面積で行う。その後、作製したナノ構造への自己組織化単分子膜(SAM)の形成に挑戦し、赤外吸収の増強が起きているかの検証を進めていく。
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Causes of Carryover |
測定に必要なシリコンのナノ構造の作製法の確立に時間を要してしまい、平成28年度中の実施を計画していた大面積でのシリコンのナノ構造の作製が次年度の実施となった。このため、この実施に必要な装置使用料等を次年度に繰り越すこととしたことで次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した助成金によりシリコンのナノ構造の大面積作製を行い、他は当初計画通りに使用する予定である。
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