2016 Fiscal Year Research-status Report
多機能性ペプチドのナノ構造制御による細胞剥離ファイバーの開発
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16K13623
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高井 まどか 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (40287975)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ペプチド / 細胞 / 捕捉 / 剥離 / 酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell, CTC)は、転移時に血管に浸潤して血液中を流れる細胞であり、癌診断におけるバイオマーカーとして近年注目を集めている。更に、患者によって効果が異なる抗癌剤や分子標的薬の検討を薬剤耐性検査により行うなど、より精度の高い癌治療のためには、回収後の患者由来のCTCを用いた性能評価が必要とされており、特異的に捕捉したCTCを回収可能な手法が求められている。細胞の回収技術としては、FACS(Fluorescence-activated cell sorting)やMACS(Magnetic cell sorting)などが広く用いられているが、FACSは抗体による細胞の前処理が必要であり、MACSは細胞に磁気ビーズが残ることが課題となっている。抗体を用いた表面設計を利用する場合も、捕捉した細胞の剥離時に細胞にダメージが入ることが少なくない。そこで本研究では、細胞に無害な酵素を用いたCTCの回収手法の確立を目的とした。コラーゲン由来の配列を有するペプチドによって基板に抗体を固定化することで、細胞に影響のない酵素であるIV型コラゲナーゼによりペプチドを分解し、抗体で捕捉した細胞を回収することが可能である。24量体のPEGを含み、活性エステル及びマレイミド基を有する二官能性架橋剤と、抗EpCAM抗体を反応させた。その後、ポリスチレンに対して高い吸着能を持つポリスチレンタグとIV型コラゲナーゼで分解するコラーゲン由来の配列を含むペプチド(RIIIRRIRRGGGGPPGVVGEQGEQGPPC)を合成した。このペプチドに抗体を結合させることで、特異的な細胞の捕捉およびコラゲナーゼによって細胞が剥離できることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コラーゲン由来の配列を有するペプチドによって基板に抗体を固定化することで、細胞に影響のない酵素であるIV型コラゲナーゼによりペプチドを分解し、抗体で捕捉した細胞を回収することが可能であることを示せた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞の捕捉率はマイクロファイバーへの固定化抗体の密度、およびファイバーの膜厚に依存する。そこで、より高効率の細胞捕捉率をもつファイバーシステムを検証する。また、分離後の剥離効率を、ペプチド配列を変化させることで行い、さらに剥離後の細胞へのダメージの評価、臨床検体を使った診断システム開発を今後の研究で実証していきたい。
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Causes of Carryover |
今年度は主に細胞剥離の効率を上げるためのペプチド設計に注力した。PEGをスペーサに入れることで 剥離効率が80%まで上げることが可能となった。これからは、血液中に存在するがん細胞の検出システムを検証する。システム作製と動物実験のため、次年度への繰越を行った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ペプチドの設計がほぼ完成したことから、捕捉率と剥離効率をあげるシステム設計とその装置開発、さらに動物実験による血液を使った研究を実施する。
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Research Products
(9 results)