2016 Fiscal Year Research-status Report
多核π共役錯体の高効率合成に基づくエネルギー変換材料の探求
Project/Area Number |
16K13626
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 理尚 京都大学, 化学研究所, 助教 (30447932)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 導電性材料 / 有機金属錯体 / エナジーハーベスト / 有機熱電変換 / 多核金属錯体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,次世代のエナジーハーベスト技術として期待される有機熱電変換技術の高度化に向けて,高い電気伝導性を示す有機金属錯体の創出をねらうものである。本年度の研究では,π共役ジチオラート配位子をもつ単核錯体が高い電気伝導性を示すことに着目し,従来法では合成が困難な多核錯体の合理的合成法に関して検討した。
構造の明確な多核π共役ジチオレン錯体を合成するためには、単核錯体の場合とは異なり,末端と中央部位において二種類の配位子を選択的に錯形成させる必要がある。そこで本研究では,末端ユニットとしてベンゼン-1,2-ジチオラート配位子をもつジクロロ金錯体をアニオン性錯体として合成した。このジクロロ金錯体を末端ユニットとして用い,架橋ユニットとして別途合成したベンゼン-1,2,4,5-テトラチオラート前駆体と塩基存在下で反応させた。得られた粉末をメタノールとクロロホルムで洗浄するだけで,一次元ロッド型の金二核錯体がジアニオン性錯体として54%の収率で単離できることがわかった。さらに架橋ユニットとしてベンゼンヘキサチオラート前駆体を新たに合成し,塩基存在下で末端ユニットと反応させた。この場合も,反応後に生じた粉末をメタノールで洗浄するだけで,二次元スターバスト型の金三核錯体をトリアニオン性錯体として86%という高い収率で単離できることがわかった。これらの多核錯体の構造は,NMR (1H, 13C),ESI Mass,UV-visスペクトルならびに単結晶X線構造解析により決定した。金三核錯体は二次元ナノシートの部分構造として含まれる骨格であるが,構造の明確な錯体として合成・単離した初めての例であり,今後の熱電変換特性の基礎研究につながる有用な知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究では,π共役ジクロロ金錯体を末端ユニットとして用いる手法により,一次元ロッド型および二次元スターバースト型の二核および三核金ジチオレン錯体をアニオン性錯体として効率的かつ簡便な単離操作で得られることを示した。これらアニオン性前駆体を酸化することにより得られる中性多核錯体は,金属を介して拡張されたπ軌道に基づき固体中での分子間π-π相互作用の増大が考えられ,熱電変換特性などの固体物性を解明する基礎研究への展開が可能となったため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究では,前年度の研究を引き続き推進し,ニッケルや銅の多核錯体の合理的合成法を開拓することに加え,中性錯体の固体物性の解明へと展開する。すなわち,構造の明確な多核π共役金属ジチオラート型錯体を用いて,薄膜中における分子の積層構造の制御とそれによる基板に対して垂直方向への高い電気伝導性の実現を図る。とくに,ディスク型2D金属錯体は剛直な平面π共役系をもち,柔軟な長鎖アルキル基を導入することによって液晶性を発現させることができれば,基板に垂直方向への一次元積層構造の形成が期待できる。種々の置換基を導入した多核錯体を用いて薄膜を作成し,そのモルフォロジーを2D-GIXDなどを用いて解明する。さらに,得られる知見に基づき熱電変換特性を評価することにより,固体構造と熱電特性との相関を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
H28年度の研究においては,合成経路の探索のため主として小スケールでの合成実験を実施した。また,固体物性を評価するには,スケールアップした合成実験も必要となる。薬品などの物品費に多額の経費が見込まれる状況となったため,次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
H29年度の助成金は,主として薬品などの消耗品と研究成果発表のための旅費として計上する。
|
Research Products
(21 results)
-
-
-
-
[Journal Article] A Stable, Soluble, and Crystalline Supramolecular System with a Triplet Ground State2017
Author(s)
Tsukasa Futagoishi, Tomoko Aharen, Tatsuhisa Kato, Azusa Kato, Toshiyuki Ihara, Tomofumi Tada, Michihisa Murata, Atsushi Wakamiya, Hiroshi Kageyama, Yoshihiko Kanemitsu, Yasujiro Murata
-
Journal Title
Angew. Chem. Int. Ed.
Volume: -
Pages: -
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-