2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13628
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清野 智史 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90432517)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 銀ナノ粒子 / 抗微生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
銀ナノ粒子が微生物中のどの部位で抗菌性能を発現しているのか、またどのような化学状態変化を辿るのか、材料学的解析法により明らかにすることを目的に研究を行っている。 繊維表面に固定化された銀ナノ粒子の検討に先立ち、銀ナノ粒子分散液での検討を行った。銀ナノ粒子の粒子径分布を制御するための合成パラメータを検討し、狭い粒径分布が得られる条件を見出した。さらに、微生物試験液との混合後、微生物を回収するための遠心分離処理で沈降しない粒子を得ることができた。この銀ナノ粒子分散液を用いることにより、銀ナノ粒子を取り込んだ微生物を得ることができるようになった。 モデル菌種として非病原性の大腸菌を用いて、銀ナノ粒子との接触時間に応じて生菌数が減少する実験条件を確立した。大腸菌のSEM観察を行ったところ、抗菌試験の前後で大腸菌の形態が変化している様子を確認することができた。 抗微生物試験環境における銀化学状態の変化を検討する為、生体試料中に含まれる含硫アミノ酸であるシステインを模擬物質として検討を行った。その結果、高濃度のシステインとの混合により、銀ナノ粒子の化学状態が金属状態から変化することが明らかとなった。 銀担持繊維を用いて、抗カビ試験及び抗ウイルス試験も実施した。銀ナノ粒子はこれらの微生物に対しても効果を発現することが確認された。また、銀ナノ粒子は抗ウイルス性を発現するものの、試験液中の夾雑成分によって失活する可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
問題なく進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
菌内部に取り込まれた銀ナノ粒子の位置特定を目的として、TEM観察による検討を実施する。昨年度までの検討で得られた知見を活用し、銀ナノ粒子を取り込んだ大腸菌をTEM観察用試料とする手法を確立する。銀ナノ粒子と菌との接触時間に応じて、銀ナノ粒子の形態及び存在位置がどのように変化するかを追跡する。また、菌に取り込まれた銀ナノ粒子の化学状態変化を、あいちシンクロトロンを利用したXAFS解析により実施する。 これらの試験は、モデル菌種である非病原性の大腸菌を用いて行う。研究の進捗に応じて、緑膿菌やサルモネラ菌、肺炎かん菌等を試験菌種として追加する。さらに、芽胞を形成する菌には銀ナノ粒子が作用し難いことも確認されており、そのモデル菌種としてセレウス菌を適用する。微生物学的構造の違いが、銀ナノ粒子の取り込み機構に及ぼす影響を評価する。比較対象として、金ナノ粒子・白金ナノ粒子を設定し、同様の試験を実施する。貴金属の化学状態変化と抗菌性との相関を評価する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、電子顕微鏡観察及びXAFS測定に適した実験条件の探索に注力して研究を行い、その探索をほぼ完了することができた。平成29年度に抗微生物機構の検討を行うための本測定を重点的に行うためには、消耗品は勿論、研究に利用する電子顕微鏡のレンタル料と、放射光施設のマシンタイム利用料及び出張旅費を確保する必要があることが、平成28年度の研究過程で判明したので、次年度使用額を発生させて対処することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究に必要な消耗品と試薬の購入費用として一部を使用する。透過型電子顕微鏡を2か月レンタルするための費用(約150万円)として使用し、その期間内に重点的に観察を行う。また、あいちシンクロトロンの利用料及び出張旅費として使用する。得られた成果を学会発表及び論文発表するための費用として使用する。
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Research Products
(4 results)