2017 Fiscal Year Research-status Report
Single-particle photomemory using colloidal quantum dots
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16K13630
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木田 徹也 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (70363421)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 量子ドット / クラスター / 電子移動 / ポリオキソ酸 / 蛍光 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロイダル量子ドットは室温動作、波長可変という特徴を持つ単一光子源で大量に入手できる。これを基本材料とし、アニオン性のクラスターイオンであるポリオキソ酸と組み合わせて、光により情報を記録し、蛍光による読み出しが可能な、単一粒子を記録単位とする光メモリの構築を目指して検討を進めた。 本年度は高い蛍光量子収率(90%)を有する鉛ハロゲン系ペロブスカイトに着目し、その量子ドットの合成およびポリオキソ酸と組み合わせて、ペロブスカイトからの蛍光の制御を試みた。まずCsPbBr3量子ドットを合成し、W10O32ポリオキソ酸との相互作用を調べたが、本量子ドットの耐久性が極めて低く、蛍光強度の急激な減少が見られた。そこで、量子ドットを酸化物と複合化したところ、耐久性が大きく向上したため、これを用いて蛍光消光および蛍光寿命測定を行った。その結果、光照射によってペロブスカイト量子ドットに生成した励起電子が、効率よくポリオキソ酸に移動することを明らかにした。一方で、ポリオキソ酸のカウンターアニオンの蛍光強度に与える影響を調べたところ、ハロゲンイオンを用いた場合には蛍光強度が大きく減少することがわかった。これはペロブスカイト中のハロゲンとポリオキソ酸のカウンタ―イオンとのイオン交換が生じたためと考えられるため、ポリオキソ酸の組成制御についても検討を加えた。以上の検討により、安定化した量子ドットと組成を制御したポリオキソ酸を組み合わせることで、電子移動を非常に効率的に生じさせることに成功した。蛍光量子収率の高い量子ドットを用いて蛍光制御を行うことによって、優れたメモリー特性の発現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画どおりに、光照射下で量子ドットからポリオキソ酸への励起電子移動が生じることを見出しており、このような複合化による蛍光強度の制御にも成功している。
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Strategy for Future Research Activity |
CsPbBr3量子ドット-W10O32ポリオキソ酸に可視光を照射することでポリオキソ酸を還元し、その際の蛍光強度の変化を詳細に調べる。さらに、酸素を加えてポリオキソ酸を再酸化し、その際の蛍光強度の復元、さらには蛍光消光-回復のサイクル性能を調べ、安定的に蛍光消光・回復の繰り返し挙動を示すことを確認する。
シングル量子ドットメモリを実現するためには、個々の量子ドットからの蛍光とその強度の制御が可能かどうかを調査する必要が有る。そこで、単一分子蛍光計測を応用して、CsPbBr3量子ドット-W10O32ポリオキソ酸系におけるシングル量子ドットからの蛍光測定を行う。
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Causes of Carryover |
本年度、新しい高輝度蛍光体として鉛ハロゲン系ペロブスカイト量子ドット/酸化物を見出した。この材料の可能性は非常に大きく、本研究で目的とする光メモリーの開発には、この新規材料のより詳細な検討が不可欠である。そのため研究期間を一年延長することで優れた成果を挙げるため、次年度に予算を繰り越すものである。
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