2016 Fiscal Year Research-status Report
極薄酸化物層の超長周期秩序水和構造の形成と機能探索
Project/Area Number |
16K13631
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
佐々木 高義 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 拠点長 (70354404)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 巨大水和膨潤 / 長周期配列 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究でメソ秩序構造のビルディングブロックとして取り扱う極薄2次元酸化物の母相となる層状チタンならびにニオブ酸化物の単結晶サンプルをフラックス法により合成した。具体的にはKMoO4をフラックスとして共存させ原料を1100℃で加熱することによりK0.8Ti1.73Li0.27O4を、またCsSO4中で1200℃から徐冷することによってKCa2Nb3O10を合成した。得られたサンプルはいずれも透明で板状の晶癖を呈し、粉末XRD測定から目的物の単一相であることが確認できた。 次にこれらのサンプルを酸水溶液に接触させたところ、層状構造を保持したままアルカリ金属イオンが抽出され、H1.07Ti1.73O4H2OおよびHCa2Nb3O101.5H2Oで示される一種の固体酸に変換されることを確認した。得られたサンプルを水酸化4級アルキルアンモニウム水溶液に浸漬したところ、イオン濃度に依存してサンプルの体積が数十倍にも顕著に膨張する様子が認められた。サンプルを光学顕微鏡で観察した結果、板状結晶が厚み方向にアコーディオンのように大きく伸長していることが確認され、その度合いは巨視的なサンプル体積の変化とよく対応していた。さらに膨張したサンプルについてX線小角散乱(SAXS)の測定を行なった結果、酸化物層と層の間隔がやはりイオン濃度に依存して数倍~数十倍に大きく拡大していることがわかった。特に希薄溶液中では100 nmに達する巨大な面間隔が観測された。この大きな膨潤は厚み1~2 nmの酸化物層がメソレンジの極めて大きな一定間隔で平行に配列した特異なラメラ構造が生成したことを意味していると言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
28年度では、2種類の層状酸化物のフラックス合成を行い、目的に適したサイズ、形状を持った単結晶サンプルの合成条件を確立するとともに、それらを水素イオン交換体に変換するための酸処理条件も確立できた。このようにして合成した板状結晶サンプルが4級アルキルアンモニウムイオン水溶液中で巨大水和膨潤することを光学顕微鏡観察、SAXS測定、化学分析など多角的な解析により明らかにした。その中でイオン濃度により膨潤度が制御できることが明らかになるなど、順調な研究進捗と言える。特に低濃度条件で底面間隔が100 nmにも達する驚異的な水和膨潤構造が確認されたことは注目に値する成果といえる。これは厚み1~2 nmの酸化物層がメソレンジの極めて大きな一定間隔で平行に配列したこれまでに報告のほとんどないラメラ構造が生成したことを意味しており、興味深い。
|
Strategy for Future Research Activity |
29年度は反応試薬の範囲を広げて、H1.07Ti1.73O4H2OおよびHCa2Nb3O101.5H2O結晶の水和膨潤挙動について検討し、この反応のより深い理解を得ることを第一の目標とする。そのためにアミノアルコールやアミノ酸など分子構造、サイズ、pKaなどが様々に異なる試薬を反応させ、膨潤反応の有無について調べる。膨潤できた場合は膨潤度が試薬の種類やその濃度にどのように依存するかを明らかにする。 第二の目標として、H1.07Ti1.73O4H2OおよびHCa2Nb3O101.5H2O 結晶を水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAOH)およびテトラブチルアンモニウム(TBAOH)水溶液で大きく膨潤させ、これに機械的シアを印加することにより単層剥離を促進させ、コロイド化する。この際29年度に生成条件を詳しく調べた知見に基づき、様々な膨潤状態から剥離を試み、どのようなサイズ、厚みのナノシートがどのような収率で得られるかについて検討する。そのために得られるサンプルを適宜希釈して基板上で乾燥し、AFMやSEM, TEMを用いて詳細な観察を行う。このようにして合成、キャラクタライズした各種ナノシートコロイド溶液を高速遠心分離し、そこで得られるのり状の沈降物について、ナノシートがメソレンジの長周期で積層構造の生成の有無について調べる。一方、ナノシート沈降物を純水中に再分散することを繰り返して、TMAまたはTBAイオン濃度の低減を試み、これら電解質濃度の制御により、ナノシートが長周期配列したラメラ構造の出現をサンプルの色調変化などから調べる。色調変化が見られたサンプルについては、SAXS測定を行い、ナノシートがどのような間隔で配列しているかを調べる。さらにサンプルを超電導磁石の強磁場下に置き、ナノシートのメソ配列構造の変化の可能性についても調べる。
|
Research Products
(6 results)