2016 Fiscal Year Research-status Report
低融点金属ナノ粒子を高濃度に内包した高分子コンポジットの創製と熱物性制御
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16K13643
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
赤松 謙祐 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (60322202)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ビスマスナノ粒子 / 相変化材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、官能基密度を制御した高分子樹脂を合成することにより導入イオン量を制御し、低融点金属として蓄熱材料への応用が期待できるビスマスナノ粒子の合成およびサイズ制御を試みた。高分子マトリックスとして、ポリ(ジビニルベンゼン-co-スチレン-co-ビニル安息香酸)、ポリ(ジビニルベンゼン-co-ジビニルベンゼン)を分散重合により合成しビスマスイオンドープ高分子前駆体を作製し、水素雰囲気下で加熱することによりビスマスナノ粒子/合成高分子ナノコンポジットを作製した。 まず安息香酸導入量を変化させることによりドープされる金属イオン量を制御したところ、形成したナノ粒子のサイズも変化することが明らかとなり、ドープ量が大きいほどナノ粒子サイズは小さくなることが分かった。これは合成高分子中のイオン交換基密度によって前駆体構造(金属イオン導入量)が決まり、ナノ粒子サイズを精密に制御可能であることを示唆している。ナノ粒子サイズは約5~15nmの範囲で制御可能であった。また、サイズと加熱温度の相関を詳細に評価したところ、ナノ粒子は原子拡散機構およびオストワルド熟成機構の複合機構により成長していることが示唆された。 さらに、サイズの異なるビスマスナノ粒子が分散した樹脂の熱物性をDSCにて評価したところ、サイズが小さくなるほどバルクの融点より低温側に吸熱ピークがみられたことから、サイズにより融解温度を制御することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の目標は、ビスマスナノ粒子サイズの制御法の確立である。サイズに制御にはイオンドープ量の制御が不可欠であると判断した。高分子の合成段階におけるイオン交換基の導入量制御によりこれを達成することができた。本年度の研究の遂行により、イオンドープ量を制御することによりビスマスナノ粒子のサイズをナノスケールで制御することに成功した。また、同じドープ量でも還元温度によりサイズが変化することを見いだしており、濃度および温度の条件によってサイズ制御可能であることが明らかとなっている。 また、反応の速度論的解析により、ナノ粒子形成メカニズムはほぼ解明されつつあり、初年度の目標をほぼ達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本手法においてはイオンの還元において水素分子を電子供給源とするため、ナノ粒子の形成には水素分子のマトリクス内拡散、電子授受反応および還元された原子の拡散による粒子成長の3点を制御する必要がある。そこで、最終年度は還元反応の速度論的解析を行うことでマトリクスの化学構造とイオン還元速度およびナノ粒子サイズとの相関を明確化し、金属ナノ粒子形成メカニズムを明らかにする。 さらにサイズおよび濃度を規定したナノコンポジット材料を作製し、融点、融解潜熱および熱伝導率を測定することで材料の構造-熱物性相関を明らかにし、本材料の蓄熱材料としての応用展開を図る。
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Causes of Carryover |
28年に計画していたナノ粒子のサイズ制御について、当初計画の予想以上に精密制御を達成することができた。そのため、電子顕微鏡観察用に予定していたメッシュグリッドや観察冶具の必要数が当初計画を下回り余剰分が生じたため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度は得られたナノコンポジットの熱物性評価を行う。その中で、ビスマスナノ粒子の融解潜熱測定にトライする予定であり、前年度未使用額はこの融点測定用試料ホルダの購入に充てる予定である。
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