2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K13645
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
斎木 敏治 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70261196)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ナノポア / DNA / 金ナノ粒子 / 相変化材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)相変化ナノポアの作製:窒化シリコンメンブレン(厚さ10~20nm)に対して、透過電子顕微鏡中での電子線照射を用いて直径10~20nmのポア、集束イオンビーム照射により、100~200nmのポアを安定して形成する手法を確立した。さらに相変化薄膜(GeSbTe)を成膜した後、サブナノ秒パルスレーザにより、水中にてポア近傍で局所結晶化を誘起するためのフルエンス、パルス数を最適化した。 (2)相変化による体積変化を利用したナノポア径の制御:(1)の手法で作製した直径150~200nmの相変化ナノポア(GeSbTeアモルファス相)に対してナノポアを通過するイオン電流計測を行い、サブナノ秒パルスレーザによる結晶化にともなって、電流値が数%増大することを確認した。結晶化にともなう相変化膜の体積収縮に起因して、ポア径が減少した結果と理解できる。 (3)相変化による帯電粒子・ナノポアメンブレン間静電誘導の制御:アモルファス相GeSbTe薄膜に部分的結晶化パターンを形成し、その上で浮遊する帯電金ナノ粒子(DNA修飾金ナノ粒子)を観察したところ、結晶相箇所に選択的に粒子が誘引され、粒子によっては結晶相上で固定される現象を確認した。結晶相とアモルファス相の導電率の違いによって発現する現象であると理解している。 (4)相変化によるナノポア粒子通過過程の制御:(1)の手法で作製した相変化ナノポアに対し、ポア周辺の相状態による帯電粒子通過レートの違いを観察したところ、結晶相の場合に圧倒的に通過レートが高いことを確認した。結晶相の場合、ポア周辺での光吸収とそれにともなう温度上昇が大きく、局所的な対流が生じ、帯電粒子が効率的にポアに誘引される結果であると解釈している。この現象とマイクロ粒子のレンズ効果を利用することにより、サイズ選択性を有する粒子通過履歴効果の発現が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
相変化ナノポアによる粒子通過過程の高コントラスト制御が初年度の主たる目標であり、年度内に大筋で達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)サイズ選択性を有する粒子通過履歴効果の実証 結晶相ナノポアへのパルス光照射下でナノポア径とほぼ同一サイズの金ナノ粒子が通過すると、その瞬間プラズモン共鳴に起因して粒子と壁面間で電場増強が起こり、GeSbTeがアモルファス化する。すなわち粒子の通過にともなって、ナノポアが高透過性から低透過性にスイッチする。これはサイズ選択性を有する粒子通過履歴効果に相当し、例えば特定サイズの粒子を1回のみ通過させるといった用途に利用できる。パルスフルエンスの調節により、低透過性から高透過性へのスイッチも可能であり、正のフィードバック性を付与することに相当する。この動作を金ナノ粒子通過観察により実証する。 (2)ナノポア径制御を利用した粒子捕捉・マニピュレーション ナノポア中での粒子の捕捉を試みる。ナノポア径とほぼ同一サイズの金ナノ粒子が通過すると、アモルファス化にともなう体積膨張によりポアが収縮し、粒子を捕捉できる可能性がある。パルス光照射下で金ナノ粒子通過観察を実施し、捕捉過程を電流計測にて確認する。捕捉に加え段階的相変化(膨張・収縮変化)や表面モフォロジー変化にともない、ナノポア内で粒子を回転させるなどのマニピュレーションも可能であると考えている。 (3)ナノポア選択的エレクトロポレーションの検証実験 電極付き相変化メンブレン上に脂質二重膜を張り(脂質ベシクルをメンブレン上で展開)、エレクトロポレーションによってナノポア通過後の金ナノ粒子が膜を貫通する過程を観察する。局所相変化によって単一の高透過性ナノポアを形成し、粒子がそのポアだけを通過、膜貫通していることを確認する。金ナノ粒子でのデモが終了次第、DNAの通過を同様に試みる。
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Causes of Carryover |
ナノポア電流計測用の低ノイズ高利得アンプを購入予定であったが、本年度は直径100~200nmのナノポアを用いた測定を中心に実施し、想定以上に大きな電流値、かつ低ノイズ測定が可能であったため、次年度の10nmナノポアの実験に向けて、機種選定を慎重に行うために、繰越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、10nmナノポアでの計測を実施しており、電流値の評価も進んでいる。早急にアンプの機種選定を行い、購入する予定である。
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