2017 Fiscal Year Research-status Report
応力発光を利用したポリマーMEMSの構造信頼性新規評価体系構築への挑戦
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16K13651
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
神谷 庄司 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00204628)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 有機薄膜トランジスタ / 曲げ試験 / その場観察 / 電子顕微鏡 / 応力発光体 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、有機薄膜トランジスタの電子顕微鏡内曲げ試験の実施と応力発光体を用いた発光による曲げ応力の可視化を実施した。有機薄膜トランジスタの曲げ試験は、曲げ変形前、変形後、曲げ戻し後の各IV特性を測定し、曲げに対するトランジスタの機械的・電気的な特性を評価した。試験は有機トランジスタ素子の表面に引張力が生じるように、またソース・ドレイン(SD)電流のチャネル方向に対して平行方向(SD間を分断する方向)に曲げるように試験した。曲げ応力の可視化の実験は、応力発光体を含有したエポキシ樹脂を用いて、まず有機トランジスタの基板であるPENフィルムへの塗布方法を検討し、その後、曲げによる発光挙動の観察実験を行った。以下に研究成果を示す。 1)曲げひずみの小さい弾性変形の範囲では、曲げ変形時にON電流値は減少し、曲げ戻し後は曲げ変形前のON電流値に戻る傾向にあることを確認した。ゲート電圧やSD電圧が大きくした状態で試験を行うと、機械的負荷によって素子が破壊へ至る前にリーク電流が生じる、新たな故障モードの存在を確認した。 2)発光体の塗布方法として刷毛塗りとスピンコートの異なる塗布を試みた。刷毛塗りは筆圧のムラの影響が大きく膜厚の制御や均一な塗布膜の作製が困難な一方、スピンコートでは、回転数と時間の制御により均質な塗布膜を得ることが可能であった。また発光体を塗布したPENフィルムを暗室下で曲げ、発光挙動を一眼レフカメラで連続観察し、曲げ負荷に伴う発光強度の増加と亀裂伝播による破壊を発光で可視化できることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は曲げ試験と電子顕微鏡観察を同時に評価し機械的な破壊と電気的な故障の2つの現象を結びつけることを目的としたものであるが、電子顕微鏡内曲げ試験において、研究計画で当初予期していなかった事態が生じている。まず曲げ変形の過程を電子顕微鏡観察する、つまりトランジスタ素子に電子線を照射すると素子のIV特性が元の状態から変化する現象を確認した。また研究実績に記載した通り、ゲート電圧とSD電圧を大きくした状態で曲げ試験を行うと、曲げひずみが小さい段階にあるにもかかわらずリーク電流が生じる、新らたな故障モードの存在を確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究は、電子顕微鏡観察による素子への電子線照射の影響およびゲート電圧とSD電圧によるリーク電流問題を解決して実験を行う。曲げ変形による素子の破壊過程の観察に必須となる電子顕微鏡観察においては、電子線の加速電圧を1keV程度の低加速電圧として、電子線の素子へのの影響を極力抑えIV特性を評価する。次に、ゲート電圧とSD電圧によるリーク電流問題、現在の印加電圧を抑えた条件(20Vを10V程度まで下げる)で試験を試みる。
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Causes of Carryover |
電子顕微鏡内曲げ試験の実施の遅れから生じたものであり、補助事業期間を延長して当初計画を達成するために必要な経費である。試験片の製作費、実験消耗品、国際会議の研究成果の発表の費用へ充当する。
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Research Products
(3 results)