2017 Fiscal Year Research-status Report
Continuous adhesion and detachment using liquid
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16K13654
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Research Institution | Tokyo University of Technology |
Principal Investigator |
西尾 和之 東京工科大学, 工学部, 教授 (00315756)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 接着 / 流体 / 多孔体 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度製作した,ラボスタンドを主軸とし,釣り用のリールと非伸縮性の糸で接着面を引っ張る簡易的な接着力測定装置の実験結果にもとづき,新たに接着力測定装置を製作した.接着面の引張りは回転速度可変モーターとし,非伸縮性の釣り糸を巻き上げる方法とした,引き上げ速度は6~96mm/minの範囲で調整可能とし,接着力の引張り速度依存性を正確に評価できる仕様とした.接着面の上側を,リールを介して上に引張る一方,下側はデジタルフォースゲージに固定し,接着面の下側が上に引っ張られる際の力を計測する方法とした.この基本構成は,昨年度製作した簡易装置の仕様に従ったものである.引き上げる側には円筒ロッドとその外側の円筒管ガイドを設け,揺らぎ無く引き上げる様にしたが,ロッドの回転を防ぐためにロッドにはピンを,ガイドにはスリットを設けた.また,接着面下側の試料固定台の中央に穴を開け,これを,L字上に穴を開けた試料固定台の台座に装着することにより,多孔性試料を用いた液体の浸み出し・吸い戻しに伴う接着力の変化を評価可能な仕様とした. 本研究の接着力測定では,ガラスなどの接着面の界面に展開する水の厚さを厳密に制御する必要がある.そのためには,2つの接着面が,互いに厳密に平行にならなければならない.新たに製作した装置では,円筒管ガイドの傾き(tilt)を2軸で微調整できるほか,位置(shift)も2軸で微調整できる様にした. スライドガラスを用いて実際に水の接着力を繰り返し測定したところ,簡易装置と比較して数値の安定性が向上したものの,値が低下した.この原因は,2枚のスライドガラスの接合面の傾きが毎回ほぼ同じであったために繰り返し安定性が向上したものの,厳密に平行に調整することができず,引張り方向に対して接着面が垂直ではないために値が低下したものと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新たに製作する接着力測定装置の仕様について,慎重に検討を行った.接着面の微調整方法,接着面の回転防止方法,引き上げモーターの回転速度と操作方法,流体の浸み出し・吸い込み機構の組み込み方法の決定に時間を要したため,当初の計画に対して遅れる結果となった.
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Strategy for Future Research Activity |
接着面のtilt・shiftの微調整を実現することが最優先課題である.接着面上面の引き上げ円筒管ガイド径の内径を24.4mm,ロッドの外径を24.0mmとして装置を組み上げたが,0.4mmの隙間が本研究の目的としては大きく,ガイドのtilt・shiftの調整に対してロッドが追従していない.そこで,ロッドの外径を現在の24.0mmから24.3mmに変更して遊びを少なくし,ガイドのtilt・shiftの調整に対応して接着面のtilt・shiftが変化する様にする.(実際は,現物合わせで遊びを限界まで少なくする.)その後,ガラス表面に展開した水の量と接着力を測定していく.ガラス表面の水の濡れ性を最大とするため,敢えて低品質のアルカリガラスを用いて酸・塩基で化学処理するほか,酸化チタンを基板表面に蒸着し,紫外線照射により超親水性表面を構築して水の最大接着力を測定する. 続いて,ガラスキャピラリープレートからの純水の浸み出し・吸い込み動作を確認し,接着力測定装置に設置して接着力の変化とその最大の差を評価する.得られた結果について特許を出願する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた最大の理由は,研究の進捗が当初の計画に対して遅れた結果,多孔体を用いた液体の浸み出し/吸い戻しの実験に着手することができなかったためである.平成30年度は上記の実験に着手し,その際の使用額に前年度余剰金を充てる.全体の計画としては,はじめに接着力測定装置の改良によって測定精度を向上させる.その後,流体の接着力について,ガラス基板の濡れ性,ガラス基板の界面に展開した純水の量(平均膜厚)と接着力の関係を調査する.特に,ガラス基板に展開する純水の膜厚を極限まで下げる手法の検討と,その際の接着力について詳細に検討を進める.また,純水の濡れ性を最大とするために酸化チタン(平成30年度購入予定)の蒸着と紫外線照射(平成30年度購入予定)による超親水性表面の適用を試みる.その後,ガラスキャピラリープレート(平成30年度購入予定)からの純水の浸み出し/吸い戻し操作を実現させ,その際の接着力の変化を計測する.最終的に,純水の接着力の変化が最大となる条件を見出し,その知見をもとに,キャピラリープレート表面への酸化チタンの蒸着,流体の粘性制御などによる改良を進めていく.
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