2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形ダイナミクスを活用したマイクロ運動機関の創出
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16K13655
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
吉川 研一 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80110823)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミクロ直流モータ / 直流ポンプ / 非線形発振 / limit cycle / 分岐現象 / 無接点モータ / 化学―機械エネルギー変換 / 光振り子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、自律運動系の中でも、「直流電場で働く回転モータ・流体ポンプ」に関して、大きな研究の進展が見られた。これまでの申請者らの研究により、絶縁性の油相中に存在する、ミクロ水滴に、数十μm程度の間隔で針状の電極を配置し、直流電圧を印加すると、自律的な往復運動が生じることを見出しており、国際誌にも掲載済みとなっている。本年度は、ミクロ水滴を、プラスチックの球状粒子に置き換えて実験を進めたところ、電極の配置に対して、二巻きのロール状の回転運動が生じることを発見した。0.1μm以下のスケールの逆ミセルが、電極近傍で荷電のスイッチングを起こすことが、媒質のロール状対流運動を引き起していると推測される。このような、二巻きのロール状の回転運動は、電極近傍で弱く荷電が正や負に注入された媒質が静電場の中で、流体運動を引き起こし、この流体運動に乗りかかることで固形物体が運動しているとする、メカニズムが考えられる。これを実証するために、電極近傍で荷電が移動する効果を取り入れた流体の運動モデルのsimulationを行い、実際に実験で観測された運動モードが生じることを理論的にも確かめている。このような研究成果は、J. Chem. Phys.誌に掲載済みとなっている。 さらに、「光照射による物体運動制御・流体ポンプ」、「常温での化学→運動エネルギー変換システム」の課題についても、極めて興味深い実験結果が得られており、共に、国際誌への投稿論文をまとめつつあるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
申請者らの研究により、絶縁性の油相中に存在する、ミクロ水滴に、数十μm程度の間隔で針状の電極を配置し、直流電圧を印加すると、自律的な往復運動が生じることを見出してきているが、今回は、ミクロな固形物体の安定な回転運動を引きおこることに成功した。国際的にみても、これは、極めて新規性の高い発見となっている。今後、多様な形態の固形物体について、直流電場下での運動モードの変化を調べることで、研究が飛躍的に発展するものと期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)「直流電場で働く回転モータ・流体ポンプ」:固形物体の素材や形状を変化させて、運動モードの変化を調べる。回転対称や反転対称性の破れた構造や、鏡像対称性の破れにより、多様な規則的運動の生成が可能となるものと期待される。 2)「光照射による物体運動制御・流体ポンプ」:金属薄膜から、適当な形状を切り出し、液面上に浮遊した状態で、局所的にレーザーを照射すると、振り子運動が生じることが明らかになりつつある。この方向の研究を推進する。 3)「常温での化学→運動エネルギー変換システム」:溶液中の化学物質に応答して、正や負の走化性を示すような実験系の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度は、「直流電場で働く回転モータ・流体ポンプ」の課題で大きく研究が進展したが、この課題では、すでに実験系自体は前年度までに確立しており、流体のモデルによるsimulationに研究の精力を集中させることにより、実験と理論両面から、つじつまのあう本質を捉えた論文の出版をすることが可能となった。数値計算では、実験とは異なり、多額の研究費の支出をようすることなく、良好な結果が得られた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降は、波長可変のレーザを用いた光運動系の実験や、化学―機械エネルギー変換系構築のための、化学薬品や実験器具などの購入を予定している。また、学会発表やオープンアクセスの論文掲載料などについても、本年度を上回る支出を予定している。
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